レノボ傘下でも揺るがぬ使命──日本スマホメーカーが「ハイエンド」と「ガラケー」を同時に出す理由

「arrows」ブランドのスマートフォンを手がけるFCNTが6月17日に発表した新製品群は、対照的だ。
1つは「arrows Alpha」。AI機能を搭載し、約35分でフル充電が可能なスマートフォンだ。もう1つは「らくらくホン F-41F」。物理ボタンを押し込んで操作する6年ぶりの新型フィーチャーフォンだ。2023年5月にレノボ傘下となった同社が、なぜ今、ここまで異なる製品を同時に開発したのか。

4月に就任した桑山泰明社長は、発表会の冒頭で印象的な言葉を述べた。「社長になって何がしたいですか、という質問に『何も変えないこと』と答えている」。レノボ出身の新社長が語る「変えない」とは何を意味するのか。
FCNTは『「やさしいテクノロジー」で、すべての人に未来を。』を企業理念に掲げている。「誰ひとり取り残さない」ことを尊重するこの理念こそが、一見矛盾する2製品の同時開発を読み解くカギとなる。

それぞれが見つめる「取り残される人々」
発表会で統合マーケティング戦略本部長の外谷一磨氏は、arrows Alphaのターゲットについて「8年前は10万円強でハイエンドモデルが買えた時代があった。今は約1.7倍になっている」と説明した。価格高騰により、かつてハイエンド機を使っていたユーザーが中級機への乗り換えを余儀なくされている。同社はこうした層を「お帰りハイエンド」と呼び、税込8万円台という価格設定で呼び戻そうとしている。

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