レノボ傘下でも揺るがぬ使命──日本スマホメーカーが「ハイエンド」と「ガラケー」を同時に出す理由
arrows Alphaは、1.5mの高さからの落下に耐えるMIL規格23項目準拠やIP69の防水性能といった日本市場が重視する堅牢性を備えながら、512GBの大容量ストレージ、2日間持続するバッテリーなど、日本のユーザーの使い方を反映した仕様となっている。搭載チップはミッドハイクラスだが、FCNTは価格と性能のバランスを重視した「手が届くハイエンド」と位置づける。

一方、らくらくホンが見据えるのは、まったく異なる「取り残される人々」だ。2026年3月に予定される3Gサービス終了により、現在も3G対応のらくらくホンを使い続ける人々が行き場を失う。その数について桑山社長は囲み取材で「数十万人」と推測する。「俺は絶対、私は絶対これから変えねえっていう強い意識があって、スマホ絶対嫌だというお客様がやっぱりいらっしゃる」。こうした人々のために、同社は6年ぶりに新型フィーチャーフォンの開発を決断した。
レノボグループの「規模の力」が生んだ効率革命
2023年の経営破綻と中国レノボによる買収を経て経営再建を進めているFCNT。arrows Alphaの開発には、レノボグループの調達力と同グループの米モトローラ・モビリティとの技術共有が大きく寄与している。
スマートフォンの頭脳にあたる半導体(SoC)の選定でも、この協業体制が生きた。当初はクアルコム製のSnapdragonも候補に挙がったが、「AIの性能とできることのバランス」を考慮し、最終的にモトローラ製品でも採用されているミッドハイクラスのMediaTek Dimensity 8350 Extremeを選択した。外谷氏によれば、グループで共通のプラットフォームを使うことで「調達だとか対応については同じ」にしてコストを抑えながら、「味付けだとかチューニングのところはしっかりと議論」して日本市場向けのカスタマイズを実現したという。
こうしたグループ全体での部材調達とプラットフォーム共通化により、同社はオープンマーケット版で「8万円台」という価格設定を実現した。外谷氏は囲み取材で「9万円の壁っていうのがあって、9万円以下というところにこだわって」いると価格戦略を説明した。
FCNTは2024年8月の製品発表会で「技術面ではレノボグループのモトローラ・モビリティ本社の開発部隊と深く連携しており、カメラや音響技術の改善においてモトローラの知見を取り入れる」体制を取っていると明かしていた。
この連携はさらに広がっているようだ。arrows AlphaでFCNTが初採用した急速充電もモトローラが得意とする技術だ。
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