救急医療の第一線で活躍してきた東大の医師が語る「理想の最期の迎え方」と「知っておきたい薬の本当のこと」

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つまり、薬には明確な限界があるということ。

薬には、その時点での症状を和らげるという「ベネフィット(利益)」がある一方で、副作用や自然治癒力の低下といった「リスク」も存在しています。だからこそ、「薬を使うかどうか」は、リスクとベネフィットの両方を天秤にかけて選択するという視点を持つことが大切です。

治すのは薬ではなく、あなた自身。それを忘れず、自分に無理をさせずに、薬と上手につき合っていきましょう。

自身の意志で選び取る「最期」

ときに薬に頼りつつ、体をうまく使い、鍛え、治癒力の高い状態を維持していったとしても、どんな人にも平等に「最期」の時は訪れます。私は「今を生きる」ということをメッセージとして強く発信していますが、「今」を大切にするからこそ、未来のために今できることがあります。

それが、「リビングウィル(生前の意志)」を記しておくということ。

私はこれを、自分の死を受け入れるためだけでなく、残される人への配慮の1つだと考えています。もし、あなたの意志が文章として明確に残されていたなら、家族はそれに沿って判断すればよい。それだけで、看取りの場において抱える「迷い」や「葛藤」が大きく軽減されることでしょう。

どんな人でも、いつ、どのように死と向き合うことになるかはわかりません。病状によっては、自分の気持ちを言葉で伝えられなくなることもあるでしょう。

そうしたとき、自分の意志が何も記されていなければ、その場を支える家族の意向にすべてを委ねることになります。けれど、本来「最期の迎え方」は、その人自身の意志で選び取るべきものです。だからこそ、いざというときのために、自分の希望をあらかじめ書き記しておくことが大切なのです。

たとえば、延命治療を望むのか、望まないのか。その判断をできるだけ具体的に記しておくことで、残される人の苦しみや迷いを和らげることができます。

死を恐れるのではなく、穏やかに受け入れる準備をすることも、生きる選択肢だと考えます。そのためにも、静かな約束としてのリビングウィルを準備することをおすすめします。

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