“怒られない優しさ”より、Z世代が欲しいのは“ちゃんと見てるよ”という期待
現代の職場では、「多様性の尊重」や「個人の価値観を大事にする」姿勢が重視されています。上司や先輩にあたる人たちは、干渉しすぎず、後輩たちのそれぞれのスタイルや選択を尊重するような関わり方を心がけているのではないでしょうか。たとえば、後輩がミスをしても、あえて怒らずに「大丈夫だよ」「よくあることだから」と軽く流す。そんな対応も、相手への思いやりとしては自然なものかもしれません。
しかしZ世代は、それに「見放された」と感じることがあります。厳しく言われない=期待されていないのかもしれない、と受け取ってしまうのです。
Z世代にとって“厳しさ”は、単なる叱責ではありません。注意されるその一瞬はしんどいかもしれませんが、そのような厳しさの中にこそ、期待や愛情が込められていることを感じることもできます。だからこそ、ただ優しくされるのではなく、「必要なときにしっかり伝えてくれる」姿勢に安心感を覚えます。
怒らない優しさが誤解を生まないためには、「相手を理解する優しさ」と「期待を込めた厳しさ」の両方を、バランスよく伝えることが大切です。信頼を込めた適切なフィードバックがあることで、「期待されている」と実感でき、モチベーションが高まります。
「見られていない」ことへの敏感さ
Z世代は一見ドライに見えますが、「自分をちゃんと見てほしい」という欲求が強く、適当に評価されたり、周囲から一律に対応されたりすることを極端に嫌います。
背景には、幼少期からSNSなどで自分と他者を「個」として比較する機会が多く、学校の成績のみならず、部活動等においても個々の努力が可視化される環境で育ったことがあります。だからこそ、「ちゃんと見てもらえない」「適当に扱われる」と感じるときの不満が、他の世代よりも強くなります。
ワークショップでも「さっと見ている感じが嫌」という声や、「成果をちゃんと見てほしい」という訴えが目立ちました。特に「何となくの印象」だけで評価されると、「自分はここで何を期待されているのか」「自分はこの職場にいる意味があるのか」と疑念が生まれやすくなります。
Z世代が求めているのは特別扱いではありません。個々の違いを理解したうえで、自分に合った声かけや評価をしてほしいと考えています。具体的な成長や変化に触れられると、「見てもらえている」という安心感につながり、前向きな意欲が引き出されていきます。
また、Z世代は「叱られるとすぐに心が折れる」「承認欲求が強い」と言われがちですが、その背景には「期待されていることに対して正しく応えたい」「その期待を裏切りたくない」という強い責任感と誠実さがあります。
たとえば、「まずはやってみて、わからなかったら聞いて」といった曖昧な指示に対して、Z世代が動けなくなることがあります。一見、自己判断力や行動力に欠けているようにも映りますが、実際には「この仕事で何が期待されているのか」「どこまでの成果を求められているのか」が不明確なまま動いて、期待に届かなかったらどうしようという不安があるのです。
フィードバックの場面でも同様です。「なんでこうしたの?」という抽象的な問いかけが混乱を招くこともあります。具体的にどこをどう改善すべきなのかわからないまま、「足りていないのか」「方向性が違うのか」「試されているのか」といった不安を抱え込んでしまうのです。ワークショップでも「なんで?の圧がしんどい」「詰められると言えなくなってしまうが、だからといって考えていないと思われたくない」という声がありました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら