与党が与党であるための「PB黒字化」、”骨太”で先送りしたが旗印は下ろさず...コロナ禍前までの「債務残高引き下げ」時期も暗示されている

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「骨太方針2025」での文言ではどうか。

債務残高対GDP比をコロナ禍前の水準に向けて安定的に引き下げる、とする文言の冠には、「『経済・財政新生計画』の期間を通じて」とある。

「経済・財政新生計画」は、「骨太方針2024」で定められ、2025年度から2030年度までの歳出効率化等に関する取り組みを中心とする計画である。それを踏まえて、先の文言を意訳すると、2030年度までに債務残高対GDP比をコロナ前の水準に引き下げるという目標を掲げた、ともいえる。

コロナ禍で、さまざまなコロナ対策のために巨額の予算が投じられ、その大半は赤字国債で賄われた。そのため、まずはコロナ禍で増えた国債の分ぐらいは、2030年度までには減らす政策努力をしようという含意がある。

有事に資金調達できるかどうか

なぜ債務残高を抑える必要があるのか。それについても、「骨太方針2025」には記されている。

「頻発する自然災害や安全保障環境の変化の中で、有事に備えた財政余力の確保の重要性は一層増しており、今後も市場で国債を安定的に発行できる環境を整えつつ、財政余力の確保のため、財政健全化に取り組んでいく必要がある」

有事の際に対策を講じる予算のために国債を増発できるようにする余地を、平時に確保しておくことが欠かせない。有事の際にいざ国債を増発しようとしても、巨額の残高を抱えていては日本政府が信用されず国債が思うように増発できないと、必要な財政支援ができなくなる。そうした事態を避けなければならない。

財政余力の確保のためには、債務残高対GDP比の安定的な引き下げが必要で、そのためにはPB黒字化目標の達成後も、引き続きPBの黒字を維持してゆかなければならない。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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