MS&AD損保2社が恩讐を越えて合併決議に至った舞台裏、統合後も続いた別資本の「競合損保」のような関係

「実現すれば、東京海上日動火災保険を抜いて業界首位に躍り出る」――。
3月28日、損害保険大手のMS&ADインシュアランスグループホールディングスが傘下の中核損保である三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の合併決議について発表すると、主要メディアの記事には決まり文句のようにそうした文言が並んだ。
現在、損保業界でトップを走る東京海上日動火災保険の正味収入保険料は、2025年3月期で2兆5188億円。対して三井住友海上とあいおいは、単純合算で同3兆1095億円となり、トップラインで首位に立つことになる。
しかしながら、ここで注目すべきなのは「業界首位」という部分ではない。目を向けるべきは、大半の報道において「実現すれば」という枕詞が付いていたことだ。
経営統合後も「同床異夢」
MS&ADの子会社同士の合併であるにもかかわらず、なぜ各メディアはあえて実現可能性に触れたのか。それは、両社が長年にわたって「同床異夢」の状態にあったからにほかならない。
かつて三井住友海上、あいおい損保、ニッセイ同和損保として独立していた3社が経営統合を発表したのは、今から16年前の2009年1月のこと。当時の収入保険料は三井住友海上が約1.5兆円、あいおいが約0.9兆円、ニッセイ同和が約0.3兆円だった。
3社の合併はそのときから「選択肢の1つだった」(MS&AD役員)。一方で、あいおいの大株主だったトヨタ自動車(持ち株比率33.40%、当時)と、ニッセイ同和の大株主だった日本生命保険(同35.38%)の利害が複雑に交錯する状態だった。
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