佐藤医師によると、生まれたばかりの赤ちゃんは、目の前のものが見える程度の視力しかないが、ものを見ることで脳が刺激され、視力が発達していく。また、ものを両眼で同時に見て立体的にとらえる両眼視機能は、生後2カ月ごろから発達して5~6歳で完成する。
はっきり見えていないために起きる斜視の代表的なものは、先天白内障だ。とくに片方の目だけ見えていない場合には、斜視以外に普段の行動には異常が見られないので、発見が遅れる。
もう1つは、きわめて稀だが、目のなかに網膜剥離や腫瘍が見つかることがある。
「それは、網膜芽細胞腫という目のがんで、年間70人程度見つかります。その発見のきっかけとなるのが、斜視と白色瞳孔です。白色瞳孔は、瞳孔が白く反射して見える状態で、フラッシュを使って写真を撮ると、片側の眼だけが光って写るのが特徴です」(佐藤医師)
見えないと見ることをやめてしまう
一方、目に異常がなくても斜視が起きることもある。実際にはこのケースのほうが多い。
「この場合、視線がずれているほうの眼が見ることをやめてしまうため、ものを見る力が伸びない弱視になる可能性があるのです。だから放置せず、早めに治療を始めることが大事になります」(佐藤医師)
また、眼球に異常がなくても、遠視が内斜視を引き起こすことがある。
後天性の「調節性内斜視」といって、1歳から5歳くらいまでに発症しやすい。もともと遠視があり、成長に伴って近くのものをはっきり見たいという意識が芽生えてくると、自然と片側の眼が内側に寄って斜視になる。
「急に斜視になるので、親御さんはびっくりするようです」(佐藤医師)
乳幼児の顔は目と目の間(鼻根部)が平坦で鼻が低い。目頭の皮膚によって内側の白目が隠されてしまうため、問題のない子でも目が内側に寄っているように見える。
実際には両眼の視線は揃っているのに、見た目が内斜視に見える状態は「偽内斜視」と呼ばれる。斜視か偽内斜視かを見極めるために、左右の目頭を指でつまんで、視線が寄っていないかをチェックする方法もあるが、そこまで精度は高くない。
「そのうちよくなるから」と様子をみていると本当の斜視のこともある。