「がん」が見つかった人が直面する「もっと早く気づいていれば」の後悔と「どうして自分が」の絶望。がん専門医が伝えたい《心の保ち方》

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つまり、体のなかにがん細胞が発生し、(検査で発見される段階の)がんができるまでに10年以上かかり、さらに転移して死に至るまでには20年以上もかかるというわけです。

このモデルによると、例えば1年前からがんはほとんど進行していないという可能性さえあるのです。

40歳で最初のがんになり、53歳の現在までに脳腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、大腸がん、肺がんの5つのがんを経験したがんサバイバー(がん体験者)の高山知朗さんは、著書『5度のがんを生き延びる技術』(幻冬舎)のなかで、次のように述べておられます。

最初のがんである脳腫瘍が見つかる2年半ほど前から、ときどき「視野がゆがむ」という症状がありました。(中略)メガネを作り直して度を弱めても、視野がゆがむという症状はたまに起きていました。
でも「前よりはよくなったような気がする」と思い、脳の検査までは受けませんでした。その結果、海外出張中に空港で意識を失って倒れるというかたちで、脳腫瘍が見つかることになります。
あのとき脳神経外科を受診して脳のMRIやCT検査を受けていたら、脳腫瘍はもっと早く見つかったのでしょう。しかし、それを後悔しているかというと、今はそうでもありません。
というのも、仮に脳腫瘍が早く見つかっていたとしても、その後の治療や現在の状況はあまり変わらなかったと思うからです。

つまり、高山さんは「仮に早く見つかっていたとして、現実的にどれほどの違いが起きるのか」について、冷静に考えることが重要であると述べています。

がんはゆっくりと進行するので、数カ月、あるいは数年前に見つかったとしても、今の状況とあまり変わらなかったかもしれない」こんなふうに考えてみてはいかがでしょうか。

「なぜ、神は自分ばかりいじめるのか?」

がんの告知を受けた多くの方が、自分ばかりに不幸が重なることに対して、「どうして自分ばかりがこんなに辛い目に遭うのか」と悲嘆に暮れてしまいます。

がんでない人や健康な人がうらやましく、イライラすることもあるでしょう。

ただ、現実には「2人に1人はがんになる時代」といわれるほど、がんと診断される人は増えています。同じような境遇の人が日本には年間およそ100万人いることを考えると、「自分だけではない」と思い直すこともできます。

がんにかかった人の多くが、「がんになって失ったもの」ばかりに目を向けてしまい、そのことばかりを考え続けてしまいます

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