「がん」が見つかった人が直面する「もっと早く気づいていれば」の後悔と「どうして自分が」の絶望。がん専門医が伝えたい《心の保ち方》

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

例えば、これまでの「平穏な日々」が失われたと感じる人も多いでしょう。入院や外来通院には時間がかかるので、大切な「時間」を失うことになります。

また、がん治療には高額な医療費もかかるので、「お金」を失うことになります。なかには、会社での「地位」や「仕事」そのものを失う人もいるかもしれません。

がんになったことで「親友や仲間」、「信頼していたパートナー」との関係がぎくしゃくしてしまい、疎遠になってしまうかもしれません。ほとんどの人が、失ったものにとらわれ、「神が自分をいじめている」と考えるのではないでしょうか。

一方で、「自分ががんになったことは、何か意味がある」と考えることもできます。ものごとは、とらえ方によっては、幸にもなり不幸にもなります。

例えば、がんになったからこそ気づく〝幸せ〟もあるのではないでしょうか。

「がんからの贈り物」の意味とは

キャンサーギフト(cancergift)」という言葉をご存じでしょうか。文字通り「がんからの贈り物」です。つまり、がんになったことで、初めて気づく大切なことです。

「がんになって良かったことなんて、あるはずがない」、あるいは「キャンサーギフトなんて、きれいごとに過ぎない」と思う人もいるでしょう。でも、よく考えてみてください。がんにならなかったら発見することができなかった「気づき」はありませんでしたか?

例えば、「生きていることの喜び」、「1日1日の大切さ」、「家族の愛情」、「周りの人のやさしさ」、「健康のありがたみ」、「食べ物のおいしさ」、「何気ない風景の美しさ」など、どんな些細なことでもかまいません。

たったひとつでもいいので、探してみてください。そして、キャンサーギフトに気づいたら、その都度メモ帳や日記、ノートに書き込んでください。いつの間にか、キャンサーギフトのリストで、いっぱいに満たされているかもしれません。

がん専門医が伝えたい がん患者が自分らしく生きるためのセルフケア大全
『がん専門医が伝えたい がん患者が自分らしく生きるためのセルフケア大全』(CEメディアハウス)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

このような「がんからの贈り物」に気づくことで、少しでも精神的な苦しみから解放され、がん治療への前向きな気持ちが生まれるのです。実際に、「がんになって良かった」という考えに至るがん患者さんもいるのです。

がんを精神的に克服した人は、このキャンサーギフトに気づき、いつも感謝の気持ちを持っています。常に誰かに「ありがとう」と言っています。自分を支えてくれる家族や友人、医師や看護師に感謝しています。

そして、自分が今生きていることに感謝するのです。すぐには難しいかもしれませんが、少しずつでも「良かったこと」を感じ取ることができるようになれればいいですね。

佐藤 典宏 帝京大学福岡医療技術学部教授、医師(外科医)、がん研究者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さとう のりひろ / Norihiro Satou

福岡県生まれ。九州大学医学部卒。

2001年から米国ジョンズ・ホプキンズ大学医学部に留学し、多くの研究論文を発表。1000例以上の外科手術を経験し、日本外科学会専門医・指導医、がん治療認定医の資格を取得。

がんに関する情報を提供するため、YouTube「がん情報チャンネル・外科医 佐藤のりひろ」を開設、登録者20万人を突破(2025年5月時点)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事