WWDC25を前に、iPhone製造のアメリカ回帰圧力と世界各国のアプリ市場規制で、アップルのビジネスモデルが根本的な変更を迫られている

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アメリカでは、こうしたApp Storeごと対象となる規制はかけられていないが、ゲーム会社エピック・ゲームズとアップルとの訴訟では、アプリ内課金をめぐり、アップルが自社決済機能の利用を義務づけていることに対し、禁止命令が出た。

アップルの主張は、配信されるアプリや課金の健全性や確実性、プライバシー保護などを訴え、そうしたアップルが作ってきた価値が保てなくなる点を主張している。

しかし残念ながら、競争法の登場人物にユーザーの利害は関係ない。市場の競争が健全かどうかのみが重視されることから、世界各国で、ユーザー不在のまま、競争環境が保たれるために、これらの法律が行使されていくことになるだろう。

シリコンバレー全体が、ビジネスモデル再考へ?

アップルは高いブランドと性能で、高利益率を維持するハードウェア部門、そしてプライバシーとセキュリティを伴いながら、ユーザーの手元にあるハードウェアの価値向上につながるソフトウェアとサービス部門の両建てで、世界トップレベルの時価総額を作り上げてきた。

しかしここにきて、双方ともに、現在のビジネス環境を維持することが難しい局面に追いやられている。たとえばサービス部門、App Storeでの扱いについて、WWDC25で何らかの変更に関する言及がなされるのかどうかは、注目すべきだ。

これらの変更は、おそらくアップルの収益を毀損するものになり、株価への影響や経営陣の責任などに及ぶ可能性を視野に入れておかなければならない。

ただし、そうした変化が求められているのは、アップルだけではない。

グーグルは検索と広告のビジネスにおいて、アメリカで裁判が行われており、分社化のシナリオも検討しなければならない段階にきている。メタも、EUのDMAで、300億円の制裁金が課されてしまった。

問題山積となっているテクノロジー企業の、優良だったビジネスモデルの維持が今後どうなっていくのか。少なくとも、ユーザーや開発者からすれば、WWDC25で指針を示して、不確実性を小さくする姿勢を、アップルに見せてほしいところだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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