WWDC25を前に、iPhone製造のアメリカ回帰圧力と世界各国のアプリ市場規制で、アップルのビジネスモデルが根本的な変更を迫られている

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最大の消費国であるアメリカ向けの製品を、ほぼ全てアメリカ国外で製造するサプライチェーンを組んだアップルにとっては、「アメリカ製造への回帰を強く迫る圧力」として、この相互関税の措置がのしかかる。

特に対中国では、追加の関税率が最高で一時125%となり、関税合戦が過熱した。製造原価(輸入申告額)に対して課せられるとしても、販売価格は2倍になってしまうことになる。

ただし、この関税措置も凍結中だ。

また4月12日には、半導体、電子機器が相互関税の対象外となる報道がなされた。鉄鋼やアルミ、自動車のような安全保障に関わる品目に分類されたが、これらの品目は元々25%の関税がかけてきた。125%の追加関税に比べれば、大幅な軽減にも見える。

しかし、同様の品目別関税がかけられている鉄鋼・アルミニウムについて、2025年6月4日に、トランプ政権は「国内産業保護」を理由に、25%から50%に引き上げた。つまり、半導体・電子機器についても、より高い関税率がかけられる可能性もある、ということだ。

このように、トランプ関税をめぐって、事態は非常に流動的で、不確実要素が強く、難しい対応を迫られている。

中国依存の解消も無意味に

アップルが受け取る、トランプ政権からのメッセージは、「iPhoneをアメリカで製造せよ」という1点だ。これはアメリカの製造業復活という果実をアピールするうえで、非常にわかりやすい材料となる。

WWDC21でアプリエコシステムに関して説明するティム・クックCEO(写真:アップル)

しかしさまざまな試算を総合しても、iPhoneをアメリカで数千万台単位で製造することが難しい点を物語っている。製造ラインの整備は兎に角として、労働者の確保とトレーニング、パーツのサプライチェーンの組み直しを、すぐに実現することは難しい。

現実的な話として、4年もしくは8年で終わるトランプ政権の期間中に、コストメリットを出すことができない可能性が高い。

また、インドやブラジル、ベトナムなど、現在アップルが製造拠点を持っている中国以外の国での製造をアメリカ向けに振り向けるなどの措置も検討できた。しかしこれも無意味となりそうだ。

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