国際貿易裁判所判決は3人の判事が一致、うち2人は共和党系。法の解釈が争点の場合、党派性が薄まる傾向で大統領に不利
この判決を受け、司法省は即日、連邦巡回控訴裁判所に控訴し、国際貿易裁判所の関税永久差し止め命令の一時停止を求める申し立てを行った。その申し立てを受け、連邦控訴裁判所は5月29日に政府の申し立てに対して、「緊急の行政的執行停止の申し立ては、一定の範囲内で認められ、国際貿易裁判所が本件で出した判決および関税の永久差し止め命令は、本控訴裁判所が申し立てを検討している間、一時的に執行は停止される」としている。この判断で、当面、トランプ関税は継続されることになる。また司法省は複数の訴訟を1本化することも求めており、これも認められた。さらに連邦控訴裁判所は、原告に対して、「6月5日までに政府の執行停止の申し立てに対する意見書の提示」を求め、政府に対しては「原告の意見書に対する反論書を6月9日までに提出する」ことを命じている。
判決の翌日、スティーブン・ミラー次席補佐官は「X」に、「この判決は制御が利かなくなった司法クーデターである」と投稿している。また、ホワイトハウスのスポークスマンは「選挙で選ばれていない判事が、国家非常事態への適切な対応を決定すべきではない。貿易赤字はアメリカ社会を破壊し、労働者を置き去りにし、アメリカの防衛基盤を弱体化させる緊急事態を招いている」と、あくまでトランプ関税は国家非常事態への対策であるとしている。共和党のジョン・ケネディ上院議員も『Fox News』の番組で「大統領の関税を課す権限は極めて明確である。連邦判事がほかの2つの府の政策策定能力に介入している。議会は大統領に関税権を譲渡している」と発言している。
三権分立の真価が問われている
裁判の結果を予想することはできないが、法理論的に見てトランプ関税の合理的な根拠は存在しない。多くの法学者がトンランプ関税の違法性を指摘している。それでも裁判においてトランプ政権はあらゆる手段を講じ、その合法性を主張するだろう。トランプ大統領は、行政府は立法府や司法府よりも権限が上にあると主張しており、強引な政治的手段を採る可能性がある。今回の裁判は、アメリカの民主主義の基本である三権分立の真価を問うものとなる。
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