素の自分を押し隠し続けるのはとてもストレスだったという。
「特に人間関係ですね。とにかく“本音”を言えない。罪を押し付けられても『すいません』って謝るしかない。『私じゃありません』なんて言おうものなら、『カラスは白いって言われたら白いって言いなさい』って叱られます」
一度入ったら抜け出せないシステム
舞妓の世界には、厳格な上下関係がある。姉さん(先輩)、お母さん(店主)、お客さんには、絶対服従をしなければならない。
「“誰よりも先に誰に挨拶するか”とか、“どのお茶屋が上か”とか、“誰と誰が仲が悪いか”まで全部覚えます。
間違えたら、見せしめみたいにみんなの前で怒鳴られます。『しきたり』とか『伝統』って言葉で包んで正当化してますけど、イジメです。
舞妓さんはみんなニコニコしてますけど、みんな失敗を恐れ、噂が広がることを恐れ、ビクビク生きていると思います」
お酒を飲む量は多いし、一日長くて4時間しか眠れなかった。体調を崩すこともあるし、記憶も飛んだ。物を壊したり、忘れ物をしたりしてまた怒られた。
そんな中、楽しかったのは食べることだったという。ただ、そんな息抜きの食事も苦痛になる場合はあった。
「若いからたくさん食べられるでしょって、食事を次々に出されることも多いです。残すと『可愛くない子』って言われるから、無理してでも全部食べます。でも太ったら怒られますから、結局吐くしかありません」
桐貴さんは未成年で舞妓になった。親子ほど年齢が離れているお客さんからセクハラされることはなかったのだろうか?
「めちゃくちゃありました。タクシーに乗ったら手を握ってこようとするし、エレベーターに乗ったらキスしてこようとする。裾に手を突っ込んでくる人も、足を触ってくる人もたくさんいます。
白粉塗ってるからダメですよっていうのに、それを崩してまで触ってくる。舞妓は『純粋で無垢で何も知らない子供』のはずなのに何故か性的な対象にはなるみたいです」
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