吉野家が「5年でラーメン事業の売上高を80億→400億に」と宣言。実現できたらどの程度凄いのか? そして案外“いい戦略”かもしれないワケ

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一方でもう一つの大きな要因として、牛丼業界の飽和も見逃せない。

2025年2月期において、吉野家は牛丼業態を100店舗以上増やす攻めの「出店攻勢」計画を立てていた。

しかし、蓋を開けてみると新規出店数は52店舗(閉店は22店舗)。牛肉やコメの値上がりなどが影響したのだ(ところで、今回のラーメン事業の目標といい、吉野家は都度「攻め」の目標を立てがちなのかもしれない)。

現在の牛丼チェーンを見ていると、その店舗数は、ほぼ横ばいになっている。かつて吉野家・松屋は都心を中心に増加するサラリーマンの需要に応え店舗数を増やしてきた。一方、それよりも後に誕生したすき家は、前2社がターゲットにしていなかった女性やファミリー層の需要を発掘し、郊外に店舗を多く作っていった。こうして全国各地に多くの牛丼屋が誕生した。

しかし、その流れは2010年代半ばで止まってしまう。それ以降、すき家が2000店舗弱、吉野家が1200店舗前後、松屋が1000店舗前後のまま、基本的には横ばいの状態が続いているのだ。

ちなみに2023〜2024年で見ると、吉野家の「出店攻勢」があったため、牛丼チェーン全体での店舗数は2.0%増加で以前よりも上昇傾向にある。ただ、吉野家が結果として出店計画を縮小させたことを踏まえると、やはり「牛丼」だけで拡大することが難しい様子が見て取れる。

多角化する牛丼チェーン

さらに、吉野家を焦らせるのが、同業他社の動きだ。牛丼チェーンの飽和に対応して、事業の多角化を進めている。

松屋は近年、とんかつ業態である「松のや」を順調に拡大。2018年4月には150店舗だった同ブランドは、現在194店舗にまで成長している。コロナ禍を挟んでいるが、順調な歩みだといえるだろう。

松屋
3ブランドを複合させた併設店。松屋ブランドを活かしながら、新たな業態を開発、定着させてきた(筆者撮影)

あるいはすき家も同様だ。

この春先に発生した「ネズミソ汁」事件で全店舗の営業時間を23時間にしたり、数日間ほとんどの店舗を閉鎖したりなどしたが、実際の売り上げは2割減ほどで済んだ。

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