【野田佳彦・単独インタビュー(前編)】「なぜ食料品の消費税率ゼロなのか?」根底の思想と制度設計を語る

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塩田:首相経験者という点も踏まえ、トランプ再登場後の日米関係をどう見ていますか。

「日本だけ勘弁してください」はダメ

野田:米国は80年間にわたって自由貿易を推進し、その恩恵をもっとも受けてきた国で、依然として世界で第一の経済大国、世界で一番、富豪の多い国です。自由貿易で成功してきた国ですが、国内の一部の地域の製造業は不振だから、その人たちから悲鳴が上がっているので何とかしようというのがトランプ政権。MAGA(Make America Great Again)の勢力を土台とした政治でしょう。だけど、それは自分の国の再分配の失敗であって、世界の秩序を整理すること自体に無理があると思っています。

新しい関税を軸として、米国中心の繁栄の秩序をもう一度、造りたいけど、関税は各国との協調の上で数字が決まってくるわけです。ルールに基づいた自由貿易があり、各国と個別の交渉の上の合意がある。それをいきなり一人で壊してしまうやり方には、どの国もおかしいと思い、違和感を持っていると思う。ストレートで言いにくい分、マルチの関係の中でだんだん再考を求めていく。それが基本姿勢では、と私は思いますね。

日米は2国間の中でもっとも大事な同盟関係で、これは軸だと思っています。アメリカも多分、世界で一番、アメリカに投資しているのは日本とわかっている。とは言いながら、例えば自動車に25%の追加関税とか、やりすぎですよ。それについては毅然と、ルール違反をしたのはそちらじゃないかと言うべきです。

報復ではありません。今回、交渉をやるけど、対抗措置というよりも、「これではルールで決めた権利・義務関係が消滅しますね」という確認から入って、「ルールを作って守らなかったのに、今度またディールで新しいことを決めたとしても、守ってくれるんですか」という「そもそも論」から入らないと、いい交渉はできないと思う。「日本だけ勘弁してください」みたいなことをやってはいけない。そこをよく注意していかなければ。

やはりマーケットが怖いということがわかりましたね。そこには即反応する。だとすると、マーケットに関して、特に米国債が売られることに対する脅威を今、ひしひしと感じているときなので、ストレートに言わなくても、一番、米国債を買っている日本が「引き続き貢献したいと思っている」と言えばいい。そこは日本が一番、交渉力持っていると思ので、それを活かさないといけない。

後編はコチラ

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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