元なでしこ・宮間あやさん(40)突然の引退から9年。「大切なものを守るために、自分はどうなってでもがんばりたい」表舞台に戻ってきた理由
ただし、この運は「チームで積み上げていくもの」だと宮間は続ける。
「アスリートであってもなくても、例えばゴミを拾うとか、困っている人を助けるとか、個人で運を積み重ねている人は多くいますよね。ですが、団体競技で結果を出すのであれば、チームとして運を積み上げることが必要なんです」
チームで積み上げる運とは、「結局は毎日手を抜かずに練習や対話を続けること」だという。
「例えば、2011年は東日本大震災が発生しました。そのようななかで私たちはサッカーをすべきなのかと数カ月間、みんなで腹を割って話しました。議論の末に、全員が自分のためではなく、日本のためにサッカーをして勝とうと努力を重ねた。1人でもその思いを欠いてしまっていたら、つかめなかった運だと思います」
自分のためではなく、誰かのために。チーム全員が手を抜かずプロセスを積み上げたことで、サッカーの神様は微笑んだ。

強いリーダーシップでチームを守る
しかし、なでしこジャパンも最初からサッカーの神様に愛されるチームだったわけではない。筆者は直前合宿から頂点に立つまでの約2カ月間、近くでなでしこジャパンを見てきたが、蜘蛛の糸のように細い「運」が強い風にあおられ、切れそうになるのを何度も目撃した。
そして、その強風の前に立ちはだかり、強いリーダーシップでチームを守っていたのが宮間だった。
スポーツチームであれ、企業であれ、組織がうまくいかなくなる要因の1つに、チーム内の温度差がある。試合に出られない選手が不平不満を表出したり、モチベーションが下がってしまったりすれば、チームは崩壊しかねない。
ワールドカップ中の宮間は、自分は主力組であるにもかかわらず、サブのメンバーが残って練習をしていれば、必ず最後の1人が練習を終えるまでグラウンドに残った。練習をしている選手のかたわらでストレッチをしながらボール拾いをしたり、元気がない選手に声をかけたり。
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