そうした中、排ガス・ゼロで走行音が静か、かつエンターテインメント性が高いイベントとして、フォーミュラE 東京E-Prix構想が現実になったといえる。
東京都も日産も「収支の開示」を
時計の針を戻すと、日本での公道レースについては、横浜MM21(現在のみなとみらい地区)におけるF1、北海道・小樽でのインディカー、東京・お台場でのF1構想などがあったが、最終的に地元警察が首を縦にふらず、実現しなかった。地方自治体の推しも弱かったようだ。

モータースポーツを興行として見た場合、主催権利、テレビ放送権利やネット配信権利、そして安全性を担保したうえでの保険や保証に関わる費用など、単独イベントとして黒字化するハードルも高い。
そのため、日本で公道を活用したモータースポーツは、山間部でのラリー競技の除き、市街地での開催は「不可能だ」という印象が、自動車産業界やスポーツ業界で定着してしまった。
そんな常識をぶち破り、昨年も今年も東京E-Prixが成功したことに、長年モータースポーツに携わってきた者として東京都に対して感謝したい。
だからこそ、昨年に引き続き指摘したいのは、東京E-Prix開催における都としての費用対効果を含む「収支の開示」だ。2026年以降も都民を含む多くの人が気持ちよく東京E-Prixを楽しむためにも、ぜひ検討いただきたいと思う。

加えて日産にも、東京E-Prixを含む、フォーミュラEの費用対効果を明確に示していただきたい。東京E-Prixと同じ週に、神奈川県内の日産・追浜工場と日産車体・湘南工場の閉鎖に関連する一部報道があった。また、早期退職制度の実施が明らかになったのもこの週だ。
日産自動車に勤める当事者にとっては、「こんなときにモータースポーツどころじゃない」という心境であろう。
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