TOEIC「中国人の替え玉受験」日本で起きた背景 《学歴社会の中国》日本での大学院進学を狙ったか
書店や英語スクールではTOEFL、IELTSの授業・教材が多い。中国語で「BECとTOEICどっちが使えるか」と検索すると、「日本・韓国企業への就職を目指すならTOEIC」と表示される。

ビジネス英語力を測るTOEICのスコアは就職や転職活動、あるいは社内でのキャリアアップで使われるイメージが強いが、今回の中国人によるTOEIC替え玉受験の目的は、大学院入試だと考えられる。
TOEICは日本において入試や採用、昇進など人生を左右する幅広いシーンで使える。実際、国際ビジネスコミュニケーション協会が2021年に日本の大学院を対象に実施した調査によると、事前にスコアを提出することで英語の試験を免除される、TOEICのスコアが入試の点数に加点される、出願要件の一部にしているなど、92校中77校が入学試験でTOEICを活用していた。
TOEICは受験機会を増やすために、公開テストだけでなく企業や学校などが任意の時間・場所で実施する団体特別受験制度(IPテスト)、さらにオンラインのIPテストも行っている。IPテストは顔写真が不要で、受験料も安い。どの方法でも履歴書などにスコアを書いていいが、公式認定証が発行されるのは公開テストだけだ。つまり、公開テストで不正行為を行っているのは、公式認定証の提出が必要だからだと考えるのが自然だ。
学歴社会の中国では大学院進学者が増加
中国は日本とは比較にならない学歴社会で、近年の就職難を背景に大学院進学者が増加している。そして中国人の間で、日本の大学院は入りやすいと認識されている。ただし日本の大学院を受験する中国人は、専門科目だけでなく日本語での対策に労力を割く必要があり、英語は楽して乗り切りたいという心理が働きやすい。
TOEICは中国ではメジャーではない民間試験なので、替え玉を依頼する側も受ける側も、罪の意識が軽いのかもしれない。
もう1つ付け加えるとすれば、TOEICには複数の試験体系があり、受験者の9割超が選択するListening & Reading Testはすべてが択一問題だ。マスクに仕込んだマイクと、超小型イヤホンでのカンニングは不可能ではない。
TOEFLやIELTS、BECはスピーキング、ライティングを含んでおり、集団で同時不正をするのは困難だ。
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