TOEIC「中国人の替え玉受験」日本で起きた背景 《学歴社会の中国》日本での大学院進学を狙ったか
「中国では組織カンニング罪という法律があり、日本よりも重い罪に問われる」「日本は中国に比べて不正対策が緩いから、中国人が集団不正をする」と考察する番組もあったが、TOEIC試験に関しては、ミスリードだ。
なぜなら中国の組織カンニング罪の目的は「国家試験の公平性を守ること」であり、対象は統一大学入試、公務員試験、司法試験など政府が主催する試験に限られる。ほかにも細かな要件があり、TOEICのような民間試験には適用されない。
業者が「日本でしか替え玉受験を請け負わない」のは、需要の問題にほかならない。
TOEICは、日本人の英語力の物差しをつくるために、アメリカのテスト開発機関「ETS」に依頼して開発された日本発祥の試験だ。公式には「160カ国で実施されている」と説明されているものの、日本と隣国の韓国以外の国ではそれほど認知されているわけではない。
ETSが発行する統計データでは、全体の受験者数や国別受験者数は公開されていないが、2018年に公開されたインタビュー記事で、「世界で700万人が受験している」と言及されている。
2018年度の日本での受験者は約266万人のため、かなりの比率を日本が占めていることがわかる。ちなみに日本での2023年度の受験者は192万人で近年は減少傾向にある。
ETSの2023年度のTOEIC受験者に関する報告書によると、500人以上のサンプルを取れたのは40数カ国・地域。日本にいるとわからないが、TOEICはローカル色の強い試験なのだ。
中国でのTOEICの位置づけ
中国でのTOEICの位置づけは、数ある英語試験の1つにすぎず影が薄い。英検に相当するような中国ローカルの試験があり、大学の卒業要件になることも多いため、学生はまずそちらに力を入れる。
英米圏の留学を目指す人はTOEFL、IELTSを受ける。ビジネス英語の試験だとケンブリッジビジネス英語認定試験(BEC)とTOEICが選択肢になる。TOEICの試験も実施されているが、日本より受験料が高く、会場も多くない。筆者も中国在住時は一時帰国した際にTOEICを受験していた。
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