イーロン・マスクが「6月開始」を明言するテスラのロボタクシーサービス、テスト走行未実施で疑問の声
マスク氏は、2019年以降はほぼ毎年、「ドライバーによる介入なしに、あるいはドライバーがハンドルを握ることなく、乗客を安全に輸送できる自動運転タクシーを1年以内に実現する」と、顧客に約束してきた。しかしテスラは、まだドライバーの手を借りずに安全に走行する機能を顧客に提供できていない。
まして、昨年の大統領選挙以来、マスク氏がテスラそっちのけでトランプ氏のサポートや米政府効率化省(DOGE)に肩入れしてきたことを考えれば、ロボタクシーの計画が予定どおりに進んでいる可能性は低い。
さらに、テスラを放置してマスク氏が行ってきたDOGEの活動は、市民からの反発を招いており、テスラディーラー前でのデモや、店舗またはテスラ車への嫌がらせや破壊行為まで生み出した。2025年1~3月期の決算発表では、テスラ車の売り上げは中国や欧州を含む主要市場で急落した。
テスラのロボタクシーはどのようなものか
テスラが6月に開始しようとしているロボタクシーサービスとはいったい、どのようなものだろうか。マスク氏は昨年10月に、カリフォルニア州のワーナー・ブラザーズのスタジオ敷地内で行ったイベントで、ハンドルもペダルもない2人乗りEVクーペ「サイバーキャブ(Cybercab)」を発表した。
マスク氏はこの発表において、サイバーキャブの購入者はクルマを使わない時間帯に、自動運転タクシーとして貸し出すことで、副収入が得られるようになると将来的な構想を語っていた。
そして、マスク氏は今年1月の業績報告の場で「6月にオースティンで、無人の完全自動運転車両による有料配車サービスを開始する予定」だと発表した。この計画は、既存のテスラ車両(主にModel 3とModel Y)でフリートを構成し、オースティンの一部に構築された、ジオフェンスで区切られたエリア内でサービスを展開することが示唆された。
ジオフェンスとは、GPSやその他位置情報をもとに、あらかじめ設定されるエリアのことで、何らかのサービスを仮想のフェンスで囲まれた区域内で提供する際に用いられる言葉だ。
自動運転サービスの検証のためのジオフェンスの場合、車両は位置情報のほかに、あらかじめ走行区域内の道路環境を高精度に3Dマッピングしたデータをコンピューターに登録し、ほかにも可能なら車間通信や路車間通信システムを駆使して、高精度に路側の歩行者までを認識する。
すでにアメリカの複数の都市でロボットタクシーサービスを提供しているGoogleの自動運転車開発部門Waymoも、ジオフェンスで区切られたエリア内でサービスを提供している。

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