全国29店舗を展開していたが、従軍慰安婦問題や竹島問題など政治的な摩擦から、2店舗の売り上げが10~15%下がって赤字が出ていた。「努力以外の部分、国と国の事情でビジネスに影響が出るのはたまったもんちゃう」と憤ったと洪社長は振り返る。

閉店か、業態変更かを迫られていたときに、日本ではほとんど知られていなかった熟成牛に出会った。サムギョプサル用の豚を仕入れていた食肉業者から、その頃まだ知られていなかったサムギョプサルの店を全国展開していることで一目置かれ、「熟成牛の店をやらないか」と声をかけられたのだ。
熟成牛とは? どこが魅力?

熟成牛とは、約40日間冷蔵庫で発酵させた牛肉のことだ。発酵により、肉の繊維が切れて柔らかくなる。それと同時にうま味が凝縮され、ナッツのような独特の香りが生まれる。
洪社長はその味と香りに惹かれ、赤字2店舗の業態を、「1ポンドの熟成牛の塊肉を、ステーキとしてシェアするレストラン」ゴッチーズビーフに変更。
すると売り上げは倍増、12月の繁忙期の売り上げは、800万円から1500万円に跳ね上がった。しかしそれに伴い、平均客単価も約3500円から、6500円、7000円と高額になった。

にもかかわらず、顧客満足度はベジテジやと変わらなかった。そればかりか、もっと喜んでいるように見えたという。
客にとっては、「手軽なサムギョプサルの楽しさ」より、「高額な熟成牛のおいしさ」が勝っていたのだ。
なぜなのか。鶏と豚は家庭で食べる機会が多いが、牛は滅多に食べないからだ。洪社長はそのとき、「牛という食材のポテンシャルの高さ」と「非日常に対しては、人は満足感を得やすい」ことに気づいたという。
同時に、「とんかつがあって、なぜ牛カツがない?」という疑問を思い出した。
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