「訪日客が9割の店もある」牛カツチェーンの京都勝牛。日本人客が"ごく一部"になっても社長が「それでええ」と言い切る深いワケ

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フードコートについてはこれまで、「揚げものは時間がかかるため相性が悪い」という定説もあったが、牛カツはとんかつと違って揚げ時間が60秒~120秒なので相性がいいそうだ。

また、休前日や休日にファミリーが多く訪れる立地では、「牛カツと和定食」という派生ブランドも。牛カツに加え、豚の角煮や生姜焼き定食、唐揚げ、肉うどんなどをラインナップし、子ども連れが受け入れやすい構成にしている。

「牛カツと和定食」には、唐揚げやサーモンの塩焼き膳などもラインナップ(写真提供:ゴリップ)

そして、こうしてブランドを分けてはいるが、「店の名前を分ける」ことはあえてしない。

「全部ひっくるめての京都勝牛。どの店でも『牛カツを味わう』という体験価値は同じですから、店名を変える必要はない。立地が違えば客層も違う。それに合わせてメニューを調整しているだけです」と洪社長は話す。

ちなみに、営業時間も店により少しずつ変えている。標準は、11時から22時だ。基本は定食店なので飲んで絡む人、長居する客も少ない。そのため、22時以降に残業が発生することはほぼなく、深夜手当も不要。人件費の面でも効率的なブランドなのだ。

海外はVIPの“一国一城制”に

現在韓国、台湾、カナダ、香港、タイ、インドネシア、フィリピン、シンガポールの8カ国にある、海外店舗の経営はどうしているのだろうか。

尋ねると、「最も留意しているのは、州によって法律が異なるアメリカ、中国以外の国では、経営パートナーを基本、『一国に一人』の体制を守ることです」と洪社長。

それも、財閥系企業か、上場企業としか組まない。海外、特にアジアでは、政府とのパイプが太い大企業でないと、駅前や繁華街の一等地は借りられないからだ。

2024年7月にオープンした、インドネシア店(写真提供:ゴリップ)

ブランドが強くても、必ずしも繁盛することができない世界なのだ。

「店舗経営ではよく『立地が8割』といいますが、それは真理です。大事なのは立地開発力。飲食店を10軒はやらせているチェーンであっても、政府と関係がなければ良い立地はとれません。だから上場企業、財閥系企業に絞って、1社だけと取り引きしているのです」

その1社の経営者はたいてい超VIPであり、彼らとの食事など交流時の会話から、貴重なビジネスアイデアも得られている。

「旅行で来日したとき行列店には並ばないけれど、ユニバーサル・スタジオの近くの飲食店に子どもと一緒に食べに行った」という話から、京都勝牛とゴッチーズビーフをユニバーサル・シティに開店したことも。そこでブランドを知った客が、「おいしい、サービスがいい」と、自国に帰ってからの常連につながったりもしている。

シンガポール中心地の商業施設「Raffles City」に2024年8月にオープンしたシンガポール店(写真提供:ゴリップ)
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