シラスが"獲り放題"になっている…魚が獲れないのを海のせいにする日本のヤバさ
なおシラスには漁獲枠がありません。主に小型の漁船が沿岸で漁獲しているだけなので何とか漁業がもってきてはいます。仮にこのタイミングでどこかの海域で漁獲量が偶然回復したとしても、それは本当の回復ではなく、一時的なことにすぎません。科学的根拠に基づく資源管理が待ったなしなのです。
シラスを漁獲してはいけないと言っているわけではありません。ただしその大前提は、資源管理が機能していて、資源量が持続的な水準である必要があります。シラスは主にカタクチイワシの幼魚です。幼魚を獲りすぎれば卵を産む親の量が減ってしまい資源は減少していきます。これを「成長乱獲」といいます。

カタクチイワシだけでなく、イカナゴの幼魚もシラスの一種となりますが、これも漁獲枠さえなく、幼魚を狙って獲り続けた結果同じく「成長乱獲」が起きて全国で漁獲量が激減して深刻な状態になっていると考えられます。
日本より水産資源管理が進んでいるペルー
次のグラフは漁獲量が多く、世界の養殖に使うフィッシュミール相場を左右するペルーのカタクチイワシ(ペルーカタクチイワシ)の漁獲量推移を表しています。青の折れ線グラフが漁獲量で赤〇はエルニーニョ現象が発生した年を示しています。

エルニーニョ現象とはペルー沖の海水温が上昇する現象です。この現象が起きると栄養分が豊富な下層の海水が上昇してこなくなるために植物プランクトンが減り、それを食べるカタクチイワシも減ってしまいます。
全部の年には当てはまりませんが、エルニーニョ現象が起きると漁獲量が減るという現象が起きています。資源量が環境の変化で大きく変化するペルーでは、カタクチイワシの資源管理が日本よりかなり進んでいます。
ペルーでは2009年よりTAC(漁獲可能量)とIQ(個別割当制度)という北欧や北米などで成功している科学的根拠に基づく資源管理の手法を取り入れました。さらに12センチ以下を幼魚とし、全体の漁獲量の10%までしか漁獲を認めていません。そして幼魚比率が増えるとTACが残る漁期の途中でも将来の資源量を考慮して禁漁も実行します。
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