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「マスメディアの敗北」は「ジャーナリズムの敗北」ではない 「信頼回復」と「真実追求」のための「科学と思想」

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  • 武田 徹 ジャーナリスト、専修大学文学部ジャーナリズム学科教授

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世の中がSNSの訴求力に傾斜するなか、ジャーナリズムはどうあるべきか(写真:metamorworks/PIXTA)
「マスメディアの敗北」――。2024年の兵庫県知事選でSNSが主要な情報源となった結果、そう指摘される機会が多かった 。しかし、この議論では「ジャーナリズム」そのものの存在感の希薄化が見落とされているのではないだろうか 。情報が氾濫し、真偽が不確かな言説が飛び交う現代において、ジャーナリズムがその役割を十全に果たすためには何が必要なのか。『アステイオン102 アカデミック・ジャーナリズム2』を編集した武田徹氏が、その本質を問い直す。

「人脈づくり」は教えても「情報処理」は教えない

「書く人」として生きたいと考えていた筆者は、大学院生の頃から雑誌に記事を書く機会を探していた。運良く潜り込めたジャーナリズムの世界で、強く魅了されたのは「取材」という方法だった。

誰でも手に取れる文献と違って、インタビューしなければ言葉としてこの世に姿を見せなかった情報を聞き出すのだ。世界で初めてその事実を知る人になるかもしれないことに興奮を禁じ得なかった。

一方で幻滅も味わった。幸運にも取材のコツを教えてくれる先輩や同僚に恵まれたが、取材相手といかにつながるかの人脈づくりの教えが殆どで、取材で聞き出した言葉をどう記事化してゆくか、つまり「情報処理」のプロセスについてのアドバイスではなかった。

言葉の取り扱いが気になったのは筆者が大学院で言語学や言語哲学を専攻していたからだろう。たとえば「会話の順番取り」に注目して言語行為を分析する手法がある。「自然な」会話は次のように進行する。今、話している人が話し続ける(自己継続)。その人が話を終えて次の語り手を指名した場合、指名された人が話し始める(他者選択)。話し終えた人が誰も指名しなかった場合は誰かが自分から話し始める(自己選択)。

こうして「自然な」パターンを把握しておくと「不自然な」会話の分析への道が開かれる。話している人がいるのに、指名もされない人が話を遮って言葉を挟む場合は、自然な会話の流れを遮る「力」が(本人が意識的か否かを問わずに)行使されている。

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【なぜ学術的知見はジャーナリズムに生かされないのか】

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