「せっかくマンションを残したのに…」資産家夫妻を襲った人生最期の誤算「障害のある子どもの相続」はどうなる?

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成年後見制度は、一度開始すると本人(この場合は長男)が亡くなるまで続きます

両親が「2人の息子のために」と残したマンションですが、この先もマンション経営の判断は、後見人の判断なしに進めることはできません。

成年後見制度は、判断能力が十分でない人を保護・支援するための制度ですが、ある意味「諸刃の剣」でもあるということです。

次男は長男のことを、いつも気にかけていました。

しかし、「兄の面倒は自分がみるつもりだったが、親が残してくれたマンションの経営に口を出されるのはたまったものではない」とぼやいています。

よく話し合ったうえで「遺言書」を作成する

このケースでは、亡くなったご主人が「マンションは次男に渡す」という遺言書を書くべきでした。

そして「遺言書の付言事項」で長男の看護を次男に託すとしておけば、面倒ごとは防げたでしょう。

※付言事項に法的な効力はありませんが、故人の希望を伝えることはできます。

あるいは、財産を相続させる代わりに、長男の看護を課すという「負担付相続」や「負担付遺贈」という遺言の選択肢もあります。

また、「家族信託」(財産を信頼できる家族や親族に託し、管理・運用・処分をしてもらう仕組み)という選択肢もありました。

これらの準備をしておけば、遺産分割協議を行うまでもなく、次男はスムーズにマンション経営を続けることができました。

どの方法をとるにしても、相続財産を受け取るという長男の相続人としての権利を守りつつ、貴重な財産を有効に活用できる方法を選択するためには、事前の準備が欠かせません。

判断能力のない方が相続人になる場合は、先々のことをあらかじめ家族(や関係者)で話し合ったうえで、遺産相続についてのプランを検討することがポイントでしょう。

いずれにせよ、相続については「しっかりした知識」を身につけ、「万全の準備」を怠らないことが肝心です。

松尾 拓也 行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家

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まつお・たくや / Takuya Matsuo

行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家。

行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役。

1973年北海道生まれ。父親が創業した石材店で墓石の営業に従事する傍ら、相続や終活などの相談を受けることが増えたため、すでに取得していた行政書士資格を活かし、相続・遺言相談をメイン業務として行うようになる。

信条は、相談者からの困り事に「トータルで寄り添う」こと。家族信託や身元保証など「新しい終活対策」についても積極的に取り組み、ライフプランや資産管理などの相談に応えるためにファイナンシャル・プランナー、住み替えニーズなどの相談に応えるために宅地建物取引士の資格を取得。ほかにも家族信託専門士、相続診断士、終活カウンセラー、お墓ディレクター1 級など、終活にまつわるさまざまな資格を取得する。

一人ひとりの「ライフエンディングシーン」(人生の終末期)で、最も頼りになるパートナーとなるべく、全方位視点で積極的な事業展開を行っている。

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