スマホで桜の健康診断──キリンビールの挑戦 「お花見文化」を未来へつなぐ、市民参加型のデータ収集プロジェクト

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また、桜の幹の写真を撮れば推定樹齢も分かるほか、穴や病気を見つけた場合は追加の撮影を促す仕組みもある。

幹の異常を報告する仕組みもある(筆者撮影)

桜AIカメラが目指すのは、季節を問わず全国規模で桜を見守る市民参加型のプラットフォームだ。日本樹木医会の和田氏は、「市民が桜の健康を見守ることで早期対応が可能になり、気候変動との関係性や適切なケア方法を探る手掛かりにもなる」と期待を寄せている。

従来、桜の診断は専門の樹木医が行っていたため、全国の桜を診断するには膨大な費用と人手が必要だった。しかし、このサービスによって一般の人が参加し、桜の健康状態のデータを集められるようになった。このデータは自治体に提供され、管理や保全の優先順位を決める際の参考資料として使われる可能性がある。

自治体専用ページでは、地域ごとの元気度の統計データなどを提供する(筆者撮影)

桜AIカメラは約5000枚の写真をもとにAIが学習を行い、樹木医の専門的な知識を活かして樹形や幹の状態から桜の健康状態を判定できるようになっている。

現在のAI判定精度は、葉のない冬の時期で約90%と高いものの、花が咲く時期では約60%にとどまっている。これは開発期間が短く、開花期の写真が不足しているためだ。今後データが増えれば、精度はさらに向上する見込みだ。

ビールメーカーが桜保全に取り組む理由

なぜビール会社がこのような取り組みを行うのか。その背景には、商品戦略上の狙いがある。

「晴れ風」は、2024年4月に発売されたキリンとして17年ぶりのスタンダードビール新商品だ。ビールらしい飲み応えと爽やかな飲み口が大ヒットを呼び、発売からわずか1年で350ml換算2億本の出荷を記録した。

晴れ風は、桜の保全と花火大会の開催に対する寄付活動を展開してきた(筆者撮影)
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