スマホで桜の健康診断──キリンビールの挑戦 「お花見文化」を未来へつなぐ、市民参加型のデータ収集プロジェクト

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晴れ風は「日本の風物詩を守る」というポジショニングを掲げ、「晴れ風ACTION」として売り上げの一部を桜や花火大会の保全に寄付する活動を継続している。2024年の活動実績では桜と花火でそれぞれで46自治体、合計92の自治体と共同で活動を行い、寄付総額は約1億855万円に達した。

同社はこの活動を「ビールを飲む喜びを広げてくれた日本の風物詩への恩返し」と位置づけている。つまりこれは単なる社会貢献ではなく、ブランドの価値提案と一体化した戦略でもある。

「見るお花見」から「守るお花見」へ

「桜AIカメラ」が消費者に提案するのは、お花見の新たな楽しみ方だ。キリンビールは「今年のお花見は、見るお花見から守るお花見へ」というメッセージを打ち出している。

サービスの使い方は簡単だ。キャンペーンページにアクセスし、スマートフォンで桜を撮影して位置情報を入力するだけ。アプリのダウンロードは不要で、花見で撮った写真のうちの1枚を送信するだけで、誰でも気軽に桜の保全活動に参加できる。写真を送った人には「桜AIカメラの参加証明書」が発行され、SNSでシェアすることで、保全活動への共感をさらに広げることができる。

キリンビールはお花見という身近な楽しみを入り口に、「日本の風物詩を守る」というブランド価値を消費者と一緒に育てようとしている。「晴れ風ACTION」の活動として昨年64万枚もの「晴れ風コイン」を収集した実績を踏まえ、今回も数万枚規模の桜のデータ収集を目指している。

同社マーケティング部の塩田梨沙氏は「自分が撮った桜の1枚が未来の桜につながることを、多くの人に分かりやすく伝えていきたい」と述べ、交通広告やX(旧ツイッター)などを通じた積極的な情報発信を展開していく考えだ。

桜の季節は短い。しかし、今年のお花見が「守るお花見」として広がれば、消費者は単なる観光客から「桜の守り手」となり、桜を楽しみながらも未来の日本の風景を守る活動に参加することになる。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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