
逆Y字の住棟のさまざまな謎
神奈川県川崎市・幸区の団地に、「逆Y字型」のフシギな形の住棟がある。
団地というと、まっすぐ伸びる長方形の建物が思い浮かぶ。だが、その住棟は裾を広げたような形で、地面に踏ん張るように立っていた。設計者は、国立京都国際会館を手がけた建築家の大谷幸夫さん(1924–2013)だ。
白いブロックを積み上げたような幾何学的な形状は、SF映画に出てくる近未来都市を彷彿とさせる。
記事の前編では、この「河原町高層住宅団地」ができた背景を、大谷研究室出身で竣工当時を知る河野進さんに話を聞きながら紐解いた。後編では、逆Y字型にしたことでかかった費用や間取りなどさまざまな謎に迫る。
さて、逆Y字の住棟の間取りはどのようになっているのか。
『神奈川県住宅年報』には、3DKのシンプルな間取りが載っている。
セットバックした低層部の住戸は、正方形のバルコニーが配置されている。上から光が差し込み、バルコニーに面した和室に南からの光が入る。
バルコニーの隣の和室は、天井が少し低くなっていて、和室の隣にある台所との境目に設けた欄間から台所にも光が入る。そこからは風も入り、通路側には床下通風の仕組みも。採光と通風の工夫が施されている。
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