ちなみに、逆Y字住棟にも国立京都国際会館にも六角形のデザインモチーフがあった。

小さな発見は建築をめぐる楽しみにつながる。
変えていかなければならないものも
貴重な建築にも、時代とともに変えていかなければならない部分も出てくる。良い建築でも改修が行われるとは限らず、設計者と関係のないところで改修が行われる例もある。石川さんは大谷研究室時代から国立京都国際会館の耐震改修やハートビル改修などに携わってきた。「改修を設計者が関与させていただいてできるのはありがたいこと」と語る。

会館は段差が多いスキップフロアが特徴だが、2003年に車いす用のスロープを設置するなどのハートビル改修が行われた。その改修を研究室時代に石川さんが担当し、大谷さんに何度も確認しながら進めたという。
「私としては大谷先生の作品に手を入れることを心苦しく思いながら設計していました。その後、会館の職員となり、『既存に違和感のない改修』『雰囲気を良くしている』などと評価を受けていることを知り驚きました。
また耐震改修では、多くの場所に耐震補強壁を設置する必要があり、機能的にも意匠的にも違和感のない改修を行うことに苦心しました。今でも来館された方に耐震補強壁が設置されている場所を説明すると、『違和感がない』と言われ、良い改修ができたと思っています」(石川さん)
石川さんは現在、大谷さんの考えを伝える“語り部”のような役割も担い、建物のコンセプトや意思を大切に維持管理に努めている。「会館の醍醐味である台形と逆台形の非日常的な空間を、多くの人に味わってもらいたい」と語る。
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