野口聡一がJAXAを「定年前退職」して築く独自路線 思い切って辞めたからこそ広がった世界がある

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野口聡一さん
野口聡一さん(撮影:倉本ゴリ:Pygmy Company /『宇宙飛行士・野口聡一から学ぶ 50歳からはじめる定年前退職』より)
「会社での地位、評価など、定年後にはなんの役にも立ちません。であるならば、ただ定年が来るのを待つのではなく、自らの手で人生を切り拓いてみてはいかがでしょうか」
そう話すのは宇宙飛行士の野口聡一さん。野口さん自身、JAXAで定年を前に、「モチベーションの低下、収入の不安、アイデンティティの喪失」と三重の悩みに直面した一人なのです。
「自分にできることは何なのか。そして、次に踏み出すための決断とは、いったい何か」を考え抜いた結果、定年前退職を決めた野口さん。著書『宇宙飛行士・野口聡一の着陸哲学に学ぶ 50歳からはじめる定年前退職』より一部を抜粋、再編集し、自らの経験、そして中高年ビジネスパーソンへのメッセージをお届けします。
【前の記事】宇宙飛行士が50代を前に直面「行き詰まり」の苦悩

先行き不安でもまずは「タイムアウト!」で楽に

3回目の宇宙飛行から戻ってきてから退職するまで、1年以上が経過していました。

なかなか決断できないとき、先行きが不安なときは、最終決断する前にいったん「タイムアウト(スポーツで使われる、試合を一時中断して作戦会議をしたり、仕切り直したりする時間)」を取ることは大事です。自分や周りの状況を冷静にみることができるし、仕切り直すことで少し気が楽になるかもしれません。

職場に不満があっても、長年慣れ親しんだ組織からは簡単に離れられないという気持ちもあるでしょう。そんなときは「タイムアウト」して試合の流れを断ち切って、本来の自分のペースを取り戻す。そして退職した後の新しい生活を想像してみる。それが、退職という大きな決断を下す前に背中を押してくれるのではないでしょうか。

もしもJAXAやNASAを退職せず、定年延長していたら、どんな日々が待っていたのだろう、と考えることもありました。日本では、組織に属している限りは、組織の論理に従うことが当然ですから、組織の人事・方針・与えられた職場で粛々(しゅくしゅく)と、そして悶々と過ごしていたと思います。

自分がやりたいことは他にあるのに、そこに向かって羽ばたくことができないのは苦痛でしょうね。その意味でも、いくら先行き不安があってもいったん仕切り直して再出発したことは正解だったと、あらためて思います。

私の場合、アメリカから戻ってきて、日本の場にまだ馴染んでいなかったから束縛感が強かったと思うんですが、そのまま組織に長く居たらいつの間にか淀んだ空気感に取り込まれて、縛られることに慣れてしまって現状を肯定してしまったかもしれません。

そういう人、多いんじゃないでしょうか。

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