フィリピンに渡った「丸ノ内線車両」の意外な役目 現役当時そのまま、2両の「02系」今どこにある?
東京メトロとしても、日本の技術を勉強してくれる外国の学生がいるのは非常によいことであり、フィリピンでのプレゼンスを上げていくという意味でもアピールポイントになる。今後も教師として社員を派遣することなどを、大学側と協議しているという。
ただ、現地に搬入された02系車両を見てみると、後から設置した蛍光灯を外部から電源を引いて点灯させているだけで、機器に通電した状態にはなっていない。
もっとも、車両の機器を作動させるには高圧電流が必要であり、難しい面もある。谷坂氏によると、現状では02系は主に車両の構造を知るための教材に使われており、将来的には一部の機器を生かした状態で学習できるように検討しているという。
また、実車はスペースの都合上、部品を取り外して分解できないというデメリットもある。そこで今後は例えば中古の台車など、部品単位での寄贈も検討しているそうだ。


東京メトロの「アカデミー」
筆者が取材していると、「今度東京に行くんです」と目を輝かせながら学生が話しかけてきた。同大学4年生のカール君。鉄道を専門とする機械工学の学士号取得を目指しており、専攻は鉄道車両(運行・保守)。将来は鉄道事業者への就職を希望しているという。
聞けば、単なる観光ではなく大学のプログラムの一環で「東京メトロアカデミー(TMA)」に参加するという。これもまた、02系譲渡をきっかけに始まった東京メトロと大学の連携の一つである。
TMAとは、東京メトロが開講している海外の鉄道関係者(鉄道事業者、政府機関、教育・研究機関、コンサルタント、サプライヤーなど)を対象とした講座だ。
TMAを立ち上げた同社国際ビジネス部課長補佐(海外プロジェクト担当)の清水芳樹氏は、「弊社は2010年代からベトナムでJICA案件として海外事業をスタートしているが、それ以外にも独自で研修やオペレーション&メンテナンス事業といった海外ビジネスを広めていきたいという方針があった」と語る。
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