企業関係者が知るべき「自然関連情報」開示とは TNFD報告書で企業の環境戦略を可視化する

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インドネシア スマトラ島の熱帯雨林。生物多様性の宝庫だ © WWF-US / Alexander Nicolas
昨今、「TNFD」(自然関連財務情報開示タスクフォース)という言葉が知られるようになっている。TNFDに基づく報告書作成の重要性やTNFD報告書解読のポイントを解説する。

TNFD」という単語を耳にしたことはあるだろうか。

「TNFD」とは、「自然関連財務情報開示タスクフォース」(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)の頭文字である。気候関連の「TCFD」(気候関連財務情報開示タスクフォース〈Task Force on Climate-related Financial Disclosures〉)と並び、企業の情報開示促進の取り組みだ。

森林や水、天然資源など、経済活動の維持に欠かせないのが「自然資本」である。その自然資本の深刻な減少は、ビジネス界でも重大なリスクと捉えられており、企業のTNFDへの注目度は高い 。

TNFDは自然破壊につながる企業の活動に歯止めをかけ、自然資本の保全に資金の流れが向かうために必要な情報開示のフレームワークとしてG7環境相会合の呼びかけにより誕生した。

「TNFD」という言葉をすでに聞いたことがある読者は、実際に自社や取引先のTNFD報告書を読んだことがあるだろうか。ぜひとも自社あるいは競合他社がTNFD開示をしているか、企業が何を自然関連リスクと捉えて考えているかを確認していただきたい。

日々の仕事で扱っている商材に思わぬリスクが隠されていたりすることを自社の報告書を読んで改めて認識できるかもしれない。リスクを適切に認識することが、思わぬイノベーションや商談につながることもある。自然資本がリスクにさらされ、事業戦略にも大きく影響を及ぼし始めた昨今、TNFD報告書を一読してみることを強く推奨したい。

本稿ではTNFDに基づく報告書作成の重要性を解説するとともに、TNFD報告書解読のポイントを紹介する。

情報不足が引き起こす自然破壊

「TNFD」の開示に関心が集まっている背景には、世界の各地域で自然破壊が進んでおり、企業の活動がそれに関係しているという事実がある。農地拡大による森林破壊や土地の砂漠化、鉱山開発による汚染物質流出などの自然破壊は、われわれの経済活動によって生じている。

経済活動がこれらの自然破壊を引き起こしてきた一因に、情報不足がある。消費などを通じた日々の経済活動がどれほどの自然破壊を引き起こしているかという情報はなお不足している。情報不足ゆえに、自然資本の利用に関するコストは適切に経済システムに反映することができなかったのだ。

そこで、自然資本の利用に関わるコストが正しく分析され、企業が自ずと自然資本に負荷をかけない活動に是正していくことが必要である。企業活動と自然資本との関係の分析・開示が進み、持続可能な社会の実現に資金が流れるようになることがTNFDの目的だ。

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