「前2輪」のユニークな形状で走るRaptorの可能性 街中の走行で快適かつ安全な移動手段を追求

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社内に飾ってあったF1マシンのフロントウィング。ピエール・ガスリーとダニール・クビアトのサインが入っていたので、2019年のトロロッソのものと思われる(著者撮影)

埼玉県大里郡寄居町の牧歌的な農村風景の中にある高度なセキュリティに守られたファクトリーには、さまざまな素材を自在に加工できるNC加工機、3軸加工機、5軸加工機、さまざまなサイズの3Dプリンター、オートクレーブや、計測のための3Dスキャナー、モーションキャプチャーなどが所狭しと並んでいる。また随所に定盤があり、正確なプロダクトを作るのに役立っている。また、そもそも寄居の立地も地盤が固く、精密な製品を作るのに向いているのだそうだ。

多数の工作機械が設置された社内。さまざまな3Dプリンターや切削機、オートクレーブが設置されており、あらゆる種類のハイテク素材を扱える(著者撮影)

それらを使って作られるのはレーシングマシンだけではなく、競技用の車イス、車イス利用者のための高度な計測機械(乗車するポジションが数mm変わるだけで、車輪を回す力が大きく変わり、日常生活が楽になるのだそうだ)、歩行フォーム計測用ロボット、人が乗れる大型のロボットなど多岐にわたる。

Raptorが街中を走る未来を見たい

そんなROIDZ TECHが作るRaptorは、決して絵空事ではなく「明日のモビリティはどうなるべきか」を真剣に考え、テスト走行を繰り返して作られたプロダクトだ。現在のままでは非常に高価なマシンになるが、製品化へのアプローチの方法はいろいろある。

「F1レーサー全員に提供して、ピットの中の移動手段に使ってもらうのもいいかもしれませんね」と杉原さんは語る。サーキットは広く、パドックを歩いて移動すると非常に長い距離を歩かねばならない。年俸数億から数十億円を稼ぐF1レーサーなら少々高価なマシンでも気軽に乗ってくれるに違いない。発想のスケールが大きい。

筆者も試乗させてもらったが、気軽に乗れて非常に運動性に優れている。前2輪の安定感は高く少々縁石に乗り上げてもラインを乱されることはなかった。またキックボードと違って急制動も可能だし、通常の2輪車と違って、車体をバンクさせたまま強くブレーキをかけることもできる。その特異なスタイルとは裏腹に、非常に実用的な側面もある。

いつか、このRaptorの市販バージョンが道を走れるようになったら、ぜひ近所に出かけるのに使いたい。いろいろと夢の膨らむプロダクトだ。

村上 タクタ 編集者・ライター

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むらかみ たくた / Takuta Murakami

iPhone、iPadなどアップル製品を中心に扱うガジェット・テクノロジー系編集者・ライター。カリフォルニアでのWWDCやiPhone発表会には2016年頃から継参加。趣味の雑誌の編集者として、’92年から約30年で約600冊の雑誌を作ってきた。バイク雑誌『ライダースクラブ』に携わり、ラジコン飛行機雑誌『RCエアワールド』、海水魚とサンゴ飼育の雑誌『コーラルフィッシュ』、デジタルガジェットのメディア『flick!』『ThunderVolt』の編集長を務める。HHKBエバンジェリスト、ScanSnapアンバサダー。バイク、クルマ、旅、キャンプ、絵画、庭での野菜作り、日本酒、ワインと家族を愛する2児の父。娘はロンドン、息子は台湾在住。

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