今回の派兵に対するロシア側からの見返りについては、まだ正確な内容は不明だ。北朝鮮としては、核関連技術やミサイル関連技術の提供を求めているとみられている。
今回のロシアからの北朝鮮への派兵要請について、2024年8月初めのウクライナ軍によるクルスク州への突然の越境攻撃が直接の契機になったことは、前述の前回の論考で記した。
プーチン氏は精強の第155海兵師団も投入してウクライナ軍と激戦を展開しているが、いまだに奪還のメドが立っていない。
クルスク奪還期日を延期したプーチン
実は、クルスク州の奪還をめぐり大統領は国防省に対し、当初2024年10月までの奪還を命じていた。しかし、この期限内にロシア軍は奪還を達成できなかった。このためプーチン氏は最近、2025年2月に期限を先送りしたといわれている。
この先送り判断の一つの材料になったのが今回の北朝鮮の派兵だろう。現在クルスク州におけるロシア軍の兵力は約5万人といわれる。しかし、早期奪還には10万人から15万人の兵力が必要と言われていた。つまり、この現兵力と必要な兵力の差をみると、5万人から10万人になる計算だ。
つまり、この計算は、前述した、首脳会談直後に流れた、派兵の最終的な規模に関する情報と数字的には符号するのだ。
プーチン氏からすれば北朝鮮の派兵部隊投入という奇手を打ってでも、奪還を急がねばならない事情がある。
それは何か。プーチン氏の脳裏には、ある日付が大きく点滅し始めたとみている。侵攻開始から丸3年を迎える2025年2月24日だ。できれば、その日に向けウクライナに対する戦場での勝利を宣言したいところだろうが、現在の戦況ではそれは極めて現実的ではない。
そこでプーチン氏としては、ウクライナ軍によるクルスク州の軍事的占領という最悪の屈辱的状況だけでも解消して、何とか丸3年の記念日を迎えたいと思っているはずだ。
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