ベールを脱いだ新iPhoneが示す「AI戦略」の強み プライバシー重視で差別化、エンゲージメント狙う

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一方で、あらゆる情報が集まってくるため、そこから有益な情報を正しく取り出そうと思うと大きなハードルになる。情報が限られているのであれば、その多くは自分自身の記憶に頼ることで、正しい情報を素早く取り出すことができるだろう。しかし、現在のスマートフォンに集まってくる情報は莫大だ。

これに対してApple Intelligenceは、スマートフォンに集まってくる情報を集約し“勝手に”整理してくれる。その中からどこにどのような情報があるかをユーザーが把握しきれなかったとしても、自動的におそらく正しいであろう情報に変換した上でユーザーに示してくれるのだ。

増えてくると煩わしかった“通知”もAIが勝手に優先度を判断してくれるように(写真:アップル)

Apple Intelligenceが生み出すiPhoneの新たな価値

本当にそれほど便利なものになるのだろうか? OpenAIのChatGPTが話題をさらって以降、世の中ではテクノロジー業界以外でもAIが社会をどのように変えるのか、それまでの常識を覆す形で、さまざまな製品やサービスの再構築が進んできた。

AIを使い慣れた方ならば、よくご存じのことだろうが、漠然とした幅広い情報に対して質問をした場合、確かに現在のAIはまるで本当のことのように間違った情報をレポートしてくることが多い。

しかし、正しい情報を資料として与えた上でレポートさせると、極めて有益な情報を得られる。たとえ参照させている資料が膨大だったとしても、その中にある情報を突き合わせ、時系列で並べながら、情報と情報の関係を整理してくれるのだ。

Apple Intelligenceが有益なのは、iPhoneの中に集まってくるプライベートな情報を、こうしたAIサービスにアップロードする資料と同じように活用できるからだ。Apple Intelligenceはプライベートな行動や情報をもとに回答を生成するため、そこから大きく逸脱した結論は出さないと考えられる。

そのために「Private Cloud Compute」という技術をアップルは開発し、ユーザーデータの匿名化と非保存処理を実現し、個人情報の保護と高度なAI機能の共存を可能にした。こうした機能を実装するためには、データプライバシーに対する社会的関心の高まりを背景にすると、パブリックなクラウドへの依存度が高いGoogleの基本戦略では対応が難しい。

加えて無料で提供されることと合わせると、ユーザーはこの機能を“端末そのものが持つ機能”として捉えるだろう。アップデートを重ね洗練をさせていくことによって、カメラ機能がそうだったように、レンジアップデートを加速させる新しい軸になる可能性は高い。

そして、簡単にライバルが追いつくこともできない枠組みで作られている。

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