プロジェクトに失敗する人と成功する人の決定差 世界に誇る建築家の功績は「なぜ」から生まれた

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プロジェクトは、それ自体が目的であることはなく、目的を達成する手段に過ぎない。高層ビルの建設や、会議の開催、製品の開発、本の執筆等々は、それ自体を目的として行われるのではない。ほかの目的を達成するために行われる。

これは単純で当たり前のことだ。だが、「見たものがすべて」の錯誤に陥り、明白で議論の余地のなさそうな結論に飛びつくとき、私たちはこのことをいとも簡単に忘れてしまう。

「答え」から始めるとアイデアは生まれない

プロジェクトを始めるときには、手段と目的のもつれをほどいて、「自分は何を達成したいのか?」をじっくり考え、心理メカニズムのせいで性急な結論に飛びつきたくなる衝動に、なんとかしてストップをかけなくてはならない。フランク・ゲーリーの、「なぜこのプロジェクトを行うのですか?」の問いかけが、そのカギを握る。

たとえば政治家が、島と本土を結びたいと考えたとしよう。橋の建設にはいくらかかるのか? どこに橋を架けるべきか? 工期はどれくらいか? こうしたことを細かく議論すれば、立派な計画を立てたような気になるかもしれない。

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だが実際には、「橋を架けるのが一番だ」という答えから始めてしまっている。もしその代わりに、「なぜ」島と本土を結びたいのかを考えれば──たとえば通勤時間の短縮や、観光客の誘致、緊急医療へのアクセス改善のためなど──最初に「目的」にフォーカスし、次にその目的を実現するための「手段」の議論に移るだろう。これが正しい順序だ。新しいアイデアはここから生まれる。トンネルはどうだろう? フェリーは? ヘリポートは? ニーズを満たすために島と本土を結ぶ方法はいくらでもある。

目的によっては、物理的に結ぶ必要すらないかもしれない。高品質のブロードバンドサービスは、わずかなコストでいろんなニーズを満たせるだろう。それに、島を「結ぶ」ことは必要でも得策でもないかもしれない。たとえば緊急医療のアクセス向上が目的なら、一番よいのは島に医療施設をつくることだろう。

だが答えから議論を始めてしまうと、こういったアイデアはけっして生まれない。

十分な情報をもとに、「何のために、なぜやるのか」を明確に理解すること、そして最初から最後までそれをけっして見失わないことが、成功するプロジェクトの基本である。

ベント・フリウビヤ オックスフォード大学第一BT教授・学科長

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Bent Flyvbjerg

オックスフォード大学第一BT教授・学科長、コペンハーゲンIT大学ヴィルム・カン・ラスムセン教授・学科長。経済地理学者。「メガプロジェクトにおける世界の第一人者」(KPMGによる)であり、同分野において最も引用されている研究者。『メガプロジェクトとリスク』などの著書、『オックスフォード・メガプロジェクトマネジメント・ハンドブック』などの編著多数(いずれも未邦訳)。ネイチャー、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、BBC、CNNほか多数の著名学術誌や有力メディアに頻繁に取り上げられている。デンマーク女王からナイトの称号を授けられた。

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