悩む管理職に伝授「部下を思い通りに動かす」コツ 「ナッジ理論」を活用して自発的に気づかせる

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ナッジ理論の基本は、あくまでも本人が自発的に行動を変えることにあります。促されていても、何を選択するかは本人の自由であり(割り込みをするという行動もある)、自らが選択するからこそ、そこに自己責任が生まれます。

ナッジ理論を知るには、まず行動経済学を知ることが大切です。行動経済学とは、簡単に言えば、人の行動を基にした心理学と経済学を融合した学問です。

行動経済学が研究される前は、「人は何か意思決定をする際は、理にかなった選択(=合理的な選択)をする」ものと考えられていました。しかし、現実には、そこに様々な人の心理が作用することで、必ずしも合理的な選択をするとは限らないことがわかってきたのです。

たとえば、たばこの害を知っていても禁煙できない。ダイエット中にお菓子を食べてしまう。こういった事象は、私たちの身の周りにたくさんあります。

多様な「バイアス」が不合理な選択を招く

このような、なぜ合理的な選択をしないのかを研究しているのが行動経済学であり、その原因の1つとして挙げられるのが、「バイアス」です。「バイアス」とは、思考のクセとも言われます。

たとえば、自分はAという考えを持っているとします。自分のAという考えを正当化したい、受け入れて欲しいという心理が働き、それに賛同している人の意見ばかりを集めてしまいます。Bという反対意見の情報を見つけても無視したり、都合よく解釈をしたりします。

このような思考のクセを、確証バイアスと言います。

バイアスは、数百あるとも言われており、とくに以下の6つが代表的なものとして挙げられます。

①確証バイアス…無意識のうちに、反対意見を無視して自分の都合のよい情報ばかりを集めて立証しようとする
②正常性バイアス…危険な状態にあるにもかかわらず、"自分だけは大丈夫"と都合よく解釈する
③集団性同調バイアス…集団と同じ行動を取ることで、自分もみんなと同じであるという心理的な安堵を無意識に選択する
④権威バイアス…権威がある人が発言することは、正しいと思い込む
⑤後知恵バイアス…ある出来事や物事の結果について、その結果をあたかも最初から予見していたかのように振る舞う
⑥投影バイアス…無意識のうちに、現在の状況を過剰に反映して、今後の予測が的確にできなくなる
次ページバイアスを逆手に取る「ナッジ理論」
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