42歳で「環境ベンチャー」妄想を叶えた彼の情熱 NYで上場を目指すJEPLAN、岩元会長に話を聞く

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そんなある日、トウモロコシからバイオエタノールをつくったという新聞記事を目にする。「トウモロコシでできるなら、綿でもできるのではないか」。ふとひらめき、東京大学大学院で研究をしていた飲み友達の髙尾正樹さんに相談した。

これをきっかけに2007年、42歳の岩元さんと26歳の髙尾さんは120万円を持ち寄り、日本環境設計株式会社(現・JEPLAN)を立ち上げた。そして翌年、着古した綿100%のTシャツからバイオエタノールを取り出すことに成功する。

起業から8年後、映画の主人公がデロリアンで旅した「未来」の2015年10月21日、岩元さんはゴミとなる綿素材の衣類からつくったバイオエタノールを燃料として、デロリアンを走らせるイベントを本当に実現した。

JEPLAN 岩元美智彦
アメリカのユニバーサル社に公認イベントとして認められ、BBCなど海外から数十社が取材に訪れた。「実は当日朝に車が動かず焦りました…」(岩元さん)という裏話も(写真:JEPLAN提供)

いらなくなった綿素材の衣類からバイオエタノールをつくる……。画期的なリサイクルだが、岩元さんにとっては壮大なビジョンのほんの一歩に過ぎなかった。

JEPLANが目指すのは、あらゆるものを循環させる「循環型社会」。私たちの身の回りには、プラスチックやペットボトル、繊維生産量の約6割を占めるポリエステルなど、石油からできたものがあふれている。

それらをゴミとして捨てずに再生すれば、新たに石油などの地下資源を使うことなく、CO2排出量も抑えられる。地球環境にやさしく、地下資源をめぐる争いのない平和な世界につながる、というのが岩元さんの持論だ。

石油由来とほぼ同品質の原料に再生

現在、JEPLANグループが運営する工場は国内に2つある。1つは2018年同社グループの一員になったペットリファインテクノロジー。神奈川県川崎市に東京ドーム約1個分もの敷地があり、使用済みのペットボトルをPET樹脂に再生。年間最大2万2000トンの製造能力を有し、飲料メーカーはこのPET樹脂から再びペットボトルをつくる。

もう1つは、北九州市にある北九州響灘工場。2017年に稼働を始めたこの自社工場では、回収した衣類などのポリステル繊維から再生ポリエステル樹脂を製造。年間最大1000トンの生産能力があり、パタゴニアやスノーピーク、ノース・フェイスなどのアパレルブランドも、この再生ポリエステル樹脂を使用して製品をつくった実績がある。

JEPLAN 岩元美智彦
工場で衣類を素材ごとに仕分け。ポリエステル100%の衣類は自社工場でリサイクル。その他まだ着られるものはリユースし、ポリエステル100%以外の素材も素材に応じて、提携先でリサイクルしている(著者撮影)

「現在、ペットボトルリサイクルの主流の技術では、リサイクルの過程で不純物を完全には除去しきれないため、同じペットボトルにリサイクルできる回数に限度があります。しかし、私たちが開発した独自のケミカルリサイクル技術は、ペットボトルや衣類に含まれる染料や不純物をきっちりと除去できるため、石油由来とほぼ同等品質の原料に何度でも再生できることが最大の強みです」と岩元さんは力を込める。

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