「1ドル142円に急騰」誰も語らないシンプルな本質 「買う理由」「売る理由」から社会の動きがわかる

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誰が何のために買っていて、誰が何のために売っているのか。視点を変えて考えると、世の中の動きが見えてくる。

20年前、入社してからしばらくの間、僕はロン毛の先輩の説明を頷きながら聞いていた。しかし、徐々に疑問が湧いてきた。

ある日は「今日は〇〇の指標が良かったから、株が買われた」と言うのに、別の日には「今日は〇〇の指標が良かったけど、良いニュースが出尽くしたから、株は買われなかった」と説明するのだ。

何が起きていたのか知れば、そのときは納得した気になる。ところが、同じことが起きても、市場の反応はまったく違ったりする。しかし、それは不思議なことではない。状況次第で人々の売買行動が異なるのは当然だからだ。例えば、空腹時にカレーの匂いを嗅げばカレーが食べたくなるが、大盛りカツ丼を食べたあとに、厨房からカレーの匂いがしても、カレーを食べたいとは思わない。

起きた事柄自体は、きっかけにすぎないのだ。それが引き金となって人々が株や為替を売り買いすることで、市場は初めて動きだす。なぜ人々は商品を買い、そして売るのかを考える必要がある。

人が物を買う「2つの理由」

そのために知っておくべきことは、金融商品であれ、日用品であれ、購入者には大きく分けて2種類存在するということだ。それは、使用するために買う人と、値上がりを期待して買う人である。

食べるためにカレーを買う。コンサートに行くためにチケットを買う。このように使用するために物を買う場合、目的は自分が幸せになることだ。

一方の値上がり期待で買う場合は、自分が幸せを感じる必要はない。まったく興味のないアーティストのチケットでも値上がりしそうなら買うし、不動産価格が上がることを信じて自分が住みたくもないマンションを買う人もいる。安く買って高く売れさえすればいい

使用することが目的の人は「買いたいから買う人」であるのに対して、値上がり目的の人は「売りたいから買う人」である。後者の人たちは近い将来、必ず転売する。転売した相手もまた、値上がり期待で買っている人であれば、その人はさらに転売する。使用することが目的の人が購入するまで、この転売は繰り返される。

株、為替、不動産など、投資(投機も含む)の対象になるような商品においても、この2種類の「買う人」が存在している。

どんな理由でも買う人がいるなら結構な話に思えるが、後者の人の割合が多すぎると、バブル経済が生まれてしまう。17世紀オランダのチューリップバブルも、1980年代日本の不動産バブルも、値上がり期待で買う人たちが価格を押し上げた。

ところが、高騰した価格では使用することを目的に買う人はほとんど存在しなかった。気づいたら売るために買う人だらけになり、バブルが弾けたのだ。

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