習近平「一帯一路」構想が10年で完全に変質の背景 中国の超あいまいな方針に日本はどう付き合う

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しかし、その数は2017年の55国から2018年に122カ国へと急増している(下図参照)。その理由は、2018年以降、アフリカやラテンアメリカ、南アメリカ、太平洋諸国等、欧州と中国を結ぶ「帯」や「路」の沿線にはない国々が、「一帯一路」の協力文書を結んでいるからである。

では、なぜ、2018年に「一帯一路」の参加国は増えたのか。そして、なぜ、アフリカや南アメリカといったシルクロードの沿線国でない国々まで「一帯一路」の協力文書を結んだのだろうか。

 

「一帯一路」は「人類運命共同体」のツールに

2017年の党大会は、「一帯一路」を含めた「中国の特色のある大国外交」が、中国の発展に良好な外部条件を作り出したとして、習近平指導部の過去5年の外交を高く評価した。そして、引き続き、「中国の特色ある大国外交」や新型国際関係、「人類運命共同体」の構築を進めていくとした。

「一帯一路」は、「人類運命共同体」と並び、中国外交の成果として、さらなる発展が求められた。

また、国際社会での影響力を拡大するため、中国は「一帯一路」を利用している。中国は、西側諸国は人権や自由といった価値観を使って中国を批判し、中国の発展を妨害しようとしていると警戒の目で見ている。

2016年の講演で、中国の元駐英大使は、国連を中心とする国際秩序とアメリカの世界秩序を区別し、中国は前者に従うが後者のすべてを受け入れはしないとした。

習近平外交は「人類運命共同体」という独自の概念を提唱し、2018年頃から国連文書にこれを盛り込む等、国際社会で広める努力を強化し始めた。「人類運命共同体」に多くの国の賛同を得て、欧米の価値観がすべてでないと対抗し、中国が更に発展できる空間を確保しようとし始めた。

「一帯一路」は、経済プロジェクトを通じて、相手国との関係を強化でき、「人類運命共同体」構想への支持を取り付ける有効な手段である。

さらに、中国は中国企業の海外進出を奨励してきたが、2016年頃から、一部分野での海外投資を規制し始めたとされており、2017年からフローの海外投資額は減少していた。

ただ、2017年の党大会は、企業の海外進出を進める方針(「走出去」)を維持した。分野を限定しつつ、中国企業の海外進出先を増やすため、「一帯一路」はより広い国々で展開されていく必要があった。

経済発展のための「必要経費」としての支持

「一帯一路」については、以前より、西側諸国において、中国の影響力拡大のための取組であるとの指摘や、中国の債務に依存する「債務の罠」に陥る問題への批判があった。しかし、上述のとおり、2018年以降も、いわゆる「グローバルサウス」とされる新興国・途上国が「一帯一路」を受け入れる流れは続いている。

その大きな理由は、途上国が、経済発展やインフラ整備のための資金を強く必要としていることにあるだろう。

筆者は、最近、シンガポールやタイの研究者や企業家と現地で意見交換する機会を得たが、「東南アジアの国々はインフラ建設等のための経済支援を依然として必要としており、人権やガバナンスに注文を付けずに支援を提供する中国に頼るのは当然だ」との声を多く聞いた。

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