宇宙ベンチャー「ispace」が月面着陸で目指すもの CEOが語る成功への自信とその先の勝ち残り策
――その裏返しで考えると、今後、ispaceが月面着陸に早期に成功し、その後も実績を重ねていけば、後発者に対してかなり有利に立てるとお考えですか。
そういう風に思っている。新しく月面着陸船を開発しようとすれば5年ぐらいかかる。その5年のうちに先行者が1年に2回、計10回着陸を成功させていれば、お客さんは状況をブレークする新しい機能やサービスでもない限り、そちらを選ぶだろう。
宇宙事業の場合にはそういった先行者利益というのは非常に強いと思っている。先行したほうがルールを形成することもできるので、その部分でも先行者メリットがある。ある程度、先行することができれば、非常に有利な、強い状況になれると思う。
課題を超える技術力が差になる
――どこが民間企業として1番乗りになるにせよ、月面着陸の成功というのは、もう目前にあります。それでは、その後の競争のポイントはどこになりますか。
まずはやはり、信頼性、着陸の成功率だろう。確実に毎回着陸できるかが一番に問われてくる。
さらにその先にあるのが、サービスの充実化だ。例えば、月面の中でも地形が複雑な場所により正確に着陸できる能力を持てるかどうか。この業界では「ピンポイント着陸」という言葉で言われるが、大体、目的地から100メートルぐらいの範囲の精度で、狙った場所に着陸するという技術というものが求められてくる。
これから、月面で水探査などをしていくためには、南極の複雑な地形のところにも降りていく必要がある。そういうニーズが高いので、精度の高い着陸をいかに早く実現できるかも非常に大事になる。
もう1つが「夜を越える」こと。月の夜は日が陰ると、マイナス150度くらいになる。リチウムイオンの液体電池では凍って使えなくなってしまうので、これまでは夜を越えることができていない。
今はわれわれも昼間だけなので、2週間ぐらいしかミッションの期間がとれない。もし、夜を越えることができるようになれば、論理的には活動を継続してできるのでミッションを長くできる。こうした課題を技術的にいかにクリアしていくのかが非常に重要で、しっかり取り組んでいきたい。
(後編:「ispaceが宇宙事業挑戦で民間資金にこだわる訳」)
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