台湾半導体TSMC、4~6月期「減収減益」の背景事情 売上高の通年予想下方修正、AI関連でも補えず

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AI向け需要増でも全体の落ち込みを補えず、TSMCの4~6月期は減収減益となった。写真は中国の江蘇省南京市にある工場Fab16(TSMC提供)

半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が7月20日に発表した2023年4〜6月期決算は、売上高が前年同期比10%減の4808億4100万台湾ドル(約2兆1567億円)、純利益は前年同期比12.2%減の1817億9900万台湾ドル(約8154億円)の減収減益となった。

ロイター・リフィニティブが集計したアナリストの4~6月期直近予想平均は、売上高が4788億3000万台湾ドル(2兆1476億円)、純利益が1725億5000万台湾ドル(約7739億円)で、市場予想は上回ったものの、発表当日の株価は前日比0.34%下落した。

TSMCの魏哲家総裁(社長に相当)は決算説明会で、同社の4~6月期業績は、パソコンやスマートフォンなど端末市場の需要不振、顧客の在庫調整の継続といったマクロ経済環境の影響を受けたと述べた。また、最近は人工知能(AI)関連の需要が増加しているものの、業界全体の低迷を補うには十分ではないとした。

最近のAI関連半導体の需要動向について、魏総裁は「現在、ディープラーニングのトレーニングや推論に使用されるAIサーバーチップはTSMC売上高全体の約6%を占めているが、今後5年間の年平均成長率は50%近くが見込まれ、売上高全体に占めるシェアは10%台前半に増加するだろう」と述べた。

4~6月期の在庫日数は1~3月期に比べ3日増加し99日となった。魏総裁は7月20日、「中国をはじめ市場の回復は予想を下回り、全体需要も依然、弱いことから、10~12月期には在庫水準をさらにコントロールしたい」との考えを示した。

2ナノ半導体、2025年量産開始を予定

TSMCは7〜9月期の売上高を167億ドル(約2兆3302億円)から175億ドル(約2兆4418億円)と予想している。その中央値で計算すると、7〜9月期の売上高は前年同期比では約15.5%減少するが、4〜6月期との比較では約9.1%の増加となる。通年ではドル換算の年間売上高予測を引き下げ、予想減収率を1~3月期時点の「1〜6%(1桁台前半から半ば)」から10%に下方修正した。

本記事は「財新」の提供記事です

TSMCの回路微細化進展と収益面への影響について、魏総裁は「2023年には3ナノメートル(N3)の売り上げシェアが 1桁パーセントに達する見込みだ」と述べた。これに続くN3Eプロセスは2023年10~12月期に量産開始を予定している。2ナノメートル(N2)プロセスも順調に進んでおり、2025年の量産開始を計画している。

海外工場建設の進捗状況について、TSMCの劉徳音董事長(会長に相当)は決算説明会で、「アメリカ・アリゾナ州にある同社の4ナノメートルのウェハー工場が、半導体の各クラスの施設に必要な熟練労働者不足の課題に直面している」と述べた。これにより、生産ラインの量産開始時期は従来計画の2024年から2025年に延期された。

(財新記者 翟少輝)
※原文の配信は7月20日

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