「らくらくホン」のスマホメーカー突如破綻の深層 急激な円安が打撃、残る日本勢は2社のみに

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円安が引き金になったとはいえ、国内メーカーのスマートフォン端末事業の厳しさは、今に始まったことではない。それはコンシューマー向けの国内スマートフォンブランドとして、ソニーの「Xperia」とシャープの「AQUOS」しか残っていないことからも明らかだ。

三洋電機の事業を引き継いでいた京セラは、個人向け端末事業からの撤退を5月に発表している。

スマートフォン端末は事業規模を大きくしなければ、大きな利益を出しにくい構造であることは確かだ。一方で旧富士通の携帯電話端末は、事業規模こそグローバル展開するメーカーには大きく及ばないものの、伝統的に携帯電話事業者との二人三脚でニーズを埋める製品を展開し、堅実に事業を進められる立ち位置にはあった。

とくにFCNTの主力製品であるらくらくホンは、加齢により視力やタッチ操作に不安のある世代にもなじめる設計が特徴だった。旧世代端末に慣れ親しんで、スマートフォンの操作性になじめないようなユーザーへの配慮もある。携帯電話を取り巻くシステム環境がアプリ、サービスなども含めて”スマホ世代”に変わる中で、シニア世代にも使いやすさを提供するため、携帯電話事業者にとっても重要な位置付けの製品シリーズだった。

事業再編を進める富士通から、投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループが携帯端末事業を買い取ったのも、組織を軽量化することで経営の健全化が十分可能だとの判断からに違いない。ポラリスは2018年に事業譲渡を受けたのち、2021年4月には富士通からFCNTの全株式を買い取っていた。

総務省の方針に揺れるスマホメーカー

昨今の円安がなければ、FCNTは国内のニッチ市場に特化することで収支を整えて財務改善を行い、その後に別の展開に挑戦することも不可能ではなかった、かもしれない。

”かもしれない”と曖昧な表現をするのは、コンシューマー向けに携帯電話端末を販売する際に大きなファクターとなる「実質価格」について、総務省の方針というメーカー側ではコントロールできないファクターが絡んでくるからだ。

国内スマートフォン市場の動向に詳しくない人でも、2019年末から”0円スマホ”が姿を消したことは覚えているだろう。

国内の携帯電話契約者数が飽和する中、顧客獲得のための過度な値引き競争が進むことを総務省が懸念し、通信料金と端末料金の明確な分離や、端末割引額を2万円までとする上限規制などの施策を導入したからだ。

その結果、実質0円とすることで売れていた国内メーカーのミドルクラス端末を実質0円では販売できなくなってしまった。端末事業を下支えするだけの販売ボリュームを出すため、再び実質0円、あるいはそれに近い価格帯に落とすには、採用する基幹部品のスペックを落とさざるをえず、多くの国内勢が売り上げを落とす要因になった。

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