記事の目次
大学入学共通テストとは
大学入学共通テストとセンター試験はどのように違うのか
大学入学共通テストができた背景、歴史
大学入学共通テスト 受験科目
大学入学共通テスト 2024年度から新たにできる科目
まとめ

大学入学共通テストとは

大学入学共通テストとは、大学に入学したい人が受けるテストです。高等学校の基礎的な学習を確認するためのテストであり、国公立大学に進学したい人が必ず受験するテストです。またセンター試験と同じく、私立大学への出願にも利用できます。

大学入学共通テストは独立行政法人大学入試センターという団体が運営していて、大学と連携して大学入試が実施されています。

大学入学共通テストの申し込み、費用、結果は?

大学入学共通テストへの申し込みには2つの手順があります。現役高校生か既卒者(浪人生など)によって手順が異なるので、注意が必要です。

高校生の場合は、在学している高校経由で申し込みを行います。大学入学共通テストの受験案内(出願書類)は各高校単位で配布されるので、学校で入手しましょう。

既卒者の場合は、共通テストを利用する大学の入試担当窓口に直接取りに行くか、全国学校案内資料管理事務センターにインターネットや電話で郵送をお願いしましょう。

出願期間は毎年9~10月上旬です。

大学入学共通テストの受験料は、受験する科目数によって変わります。

3教科以上受験の場合は1万8,000円で、2教科以下受験の場合は1万2,000円です。

国公立大学を受験する人は3教科以上の受験となるので、必ず1万8,000円になります。

大学入学共通テストの成績結果は、成績通知を希望した人にのみ、受験後4月1日以降に郵便にて通知されます。なお、成績通知には手数料として800円がかかります。

※2022年4月時点の情報

大学入学共通テストとセンター試験はどのように違うのか

大学入学共通テストはセンター試験からの変更点がいくつかあります。

筆者は現在私立高校で働いていますが、実際に現場レベルでも変更点は話題になりました。今回は現場レベルでも話題になった、主な変更点についてご紹介します。

主な変更点は以下のとおりです。

① 数学①【数学Ⅰ・ⅠA】の試験時間が変更
60分⇒70分
② 英語の配点が変更
「筆記200点+リスニング50点=250点」⇒「リーディング100点+リスニング100点=200点」
③ 英語のリスニングで読む回数が変更
2回読みの問題のみ⇒1回読みの問題と2回読みの問題の並立

①数学①【数学Ⅰ・ⅠA】の試験時間が変更

数学①【数学Ⅰ・ⅠA】の回答時間が長くなりました。

受験時間が増え問題数も増えました。大学入学共通テスト導入初年度、2020年度の出題傾向は、センター試験とほとんど変わりませんでした。

しかし翌年の2021年度の数学は出題形式が変わり、難化が話題となりました。

大学入試センターが公表している結果によると、数学Ⅰ・ⅠAの平均点が、前年度57.68点から37.96点と約20点も平均点が下がりました。

以前の問題は与えられた数式から正解を導く傾向だったのに対し、2021年度のテストでは、数式の誘導が減り、自分で数式を導き出す思考力が問われるような問題になったのです。

この傾向の変化に受験生が対応できなかったため、平均点が下がったと考えられます。

大学入学共通テストの目的が思考力を問うテストであることから、今回難化した数学の出題形式が本来の姿なのかもしれません。

②英語の配点が変更

リーディングとリスニングの配点変更が大きな話題となりました。

センター試験では筆記が200点、リスニングが50点でした。

しかし大学入学共通テストではリスニングの配点が倍になり、100点となったのです。そのため、より英語を聴く力が要求されるようになりました。

またリーディングも文法問題や発音問題が消え、すべて読解問題に変更され、総語数も大きく増えました。そのため限られた時間で多くの英文を読解する力が要求されます。

筆者も高校で英語を教えていますが、最後まで解答できない生徒が以前よりも多くなっている印象です。文法の知識ももちろんですが、まとまりのある文章を速く正確に読む力が必要になるので対策が必要です。

③英語のリスニングで読む回数が変更

センター試験のリスニングテストはすべての問題が2回読みだけでしたが、大学入学共通テストでは序盤が2回読み、中盤から後半にかけては1回読みになりました。

また発音もアメリカ英語発音だけでなく、イギリス英語発音や日本などネイティブではない発音も使われるようになりました。

そのため単純な英語を聴く力に加えて、多様な人が話す英語に慣れる必要があります。

リスニングは一朝一夕で身に付くものではないので、時間をかけて対策していかなければなりません。

大学入学共通テストができた背景、歴史

大学入学共通テストは1978年度に始まった共通第1次学力試験(通称、共通一次)から、1989年度の大学入試センター試験を経て、2020年度から導入されたテストです。

共通の問題を使って受験生の基礎学力を測定する目的で始まった共通1学力次試験でしたが、大学の序列化と受験地獄を悪化させるとして、大学入試センター試験に変更されました。

しかし選択形式のテストの限界や、知識偏重型からの脱却を目的として、大学入学共通テストの導入が進められました。

時代が急速に変化する社会では、知識があるだけでなく、その知識を使うための思考力や問題解決力が必要になります。しかし以前のセンター試験は選択式の問題だったため、思考力や問題解決を測定するためには適さないとの問題点が挙げられるようになったのです。そこで文部科学省は、より高大接続を意識した、思考力や問題解決力を重視した試験内容のテストを導入すると発表しました。

当初は、記述試験の導入、英語外部試験の導入など大きな変更を目指しましたが、現場の強い反発があり現行の試験となりました。反発の大きな理由として記述試験の公平性、英語外部試験の導入による格差などです。

記述式問題の採点にはどうしても主観が入ってしまうため、1点で合否が決まる大学入試の特性上、公平性の確保が問題になりました。また公平性を担保するためには採点者の訓練が必要です。しかし数十万人の解答を数週間で採点できるほど、訓練された採点者の人数を確保することは極めて難しいのが現状でした。そういった懸念があり現場では大きな反発があったのです。

英語外部試験導入に関しても強い反発がありました。なぜなら民間試験を導入することで、生徒の経済・地域格差が生じてしまうからでした。

例えば、離島に住む生徒の場合、受験地に移動して外部試験を受けなければいけないため、1回の受験費用は都市部の生徒よりも高額になります。また民間試験を何度も受験するためには、その分受験料が高額になります。すると家庭の収入によって受験機会が左右される可能性があり格差を生んでしまいます。

そういった理由から民間試験導入は公平性に欠けるとの反発も起こりました。

以上の理由で現場の教職員や生徒から(署名活動などの)大きな反発があり、現行の大学入学共通テストになったのです。

2022年度の高校1年生から新しい学習指導要領が始まります。新学習指導要領に対応した新たな大学入学共通テストも現在検討されている段階で、今後も少しずつ変更されていく予定です。

大学入学共通テストの過去概要

ここでは過去の大学入学共通テストの概要を紹介します。令和4年3月時点で2年分しか実施されていませんので、2年分のデータをご紹介します。

大学入学共通テスト 日程

大学入学共通テストの日程は以下のとおりです。

現在2023年度は日程のみ公表されていて、例年どおり1月に実施予定です。

大学入学共通テスト 受験科目

大学入学共通テストの受験科目は以下のとおりです。

大学入学共通テスト(2023年度まで)

大学入学共通テスト 2024年度から新たにできる科目

2022年度の高校1年生から学習指導要領が変わります。新学習指導要領を受け、25年度から大学入学共通テストの科目も変更するとの予告が、文科省より発表されています。

具体的には地理が【地理総合、地理探究】に、日本史や世界史が【歴史総合、日本史探究】【歴史総合、世界史探究】に変更になります。

また、現代社会が【公共】に変更になり、新たに【情報Ⅰ】が入試科目に追加されます。

なお今後さらに変更する可能性があり、最終的な決定は2023年6月ごろと発表されています。

(21年7月時点のもの、23年6月まで変更する可能性あり)

まとめ

今、大学入試は大きな変化の時期であり、親世代が経験したようなこれまでの受験の知識では対応できなくなりました。大学入学共通テストはセンター試験と比べて、問題の質や形式が大きく変わり、より思考力や問題解決力が必要な試験になったためです。今後も【情報Ⅰ】が試験科目に加わるなど、大きな変化が予測されます。

そして大学入試の変化により高校の教育や授業も、知識注入型の授業から、より知識を活用した探究的な授業へシフトしていくでしょう。時代の変化とともに、教育も入試も変化し続けています。つねに新しい情報を入れながら対応していきましょう。

 
earth 現役私立教員

地方で働く現役高校教師。仕事に誇りを持ちつつ、明るく・楽しく教育に携わっていけるような新しい形の教師像を模索中。教員という職業のイメージアップな情報発信をしている。

(写真:Getty Images)