盛田昭夫氏、出井伸之氏らソニー歴代トップの側近を務めた佐々木繁範氏に、人を動かすスピーチの要諦を聞いた。
──リーダーにとって説得力が増すスピーチの方法は。
古代からの教養書であるアリストテレスの『弁論術』。ここにスピーチにおける説得力の源泉が書かれている。ロゴス(論理)、パトス(感情)、エートス(信頼)が3大要素だ。まずはロジック。話す内容に根拠があるのかが重要になる。2つ目は感情、情動。論理だけで人は動かない。心を突き動かすには、感情に訴求することが大事で、手段としてはストーリーテリング。3つ目は信頼できる人柄、人格だ。話す内容がどんなに高尚でも、話している人は本当に信頼できるのか。コロナ禍で不安を抱えている今、この人にならついていけるという信頼が必要だ。
──共感、非言語、自己開示も重要と強調していますね。
話を届ける相手を思いやって、心情に寄り添い、理解しようと思うことが共感。相手の状況や関心にお構いなしに自分の言いたいことを一方的に話しても、相手には届かない。聞き手の状況や心情を想定し、彼ら彼女らに役立つ話ができるのかを考えることが大切。
スピーチは言語と非言語(雰囲気や態度など)の双方がそろってメッセージとして発信される。言語と非言語それぞれのメッセージにズレが生じたときは、非言語が勝ってしまう。いくらすばらしいことを話しても、非言語から伝わる情報で「この人は何か裏がありそうだ」と感じてしまうと、エートス(信頼)が得られず、せっかくのスピーチが心に響かない。
自己開示とは本音で自分をさらけ出すこと。自慢話では参考にならないので、成功までの苦労談や苦難の時代を乗り越えた話、経営者としてさんざん悩んだ経験からどんな教訓が得られたのかを話すことだ。リーダー本人が体験した出来事や克服策、メンタル面やマネジメントの話は、どのリーダー層も共通して学べる。聞き手は「そこまで話してくれるのか」と感じ入って信頼にもつながる。
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