脱炭素に向けた動きが世界で加速している。菅首相も、就任来立て続けに脱炭素目標の強化に動いた。気候変動を人類の最大の将来リスクの1つと位置づけるなら、各国が脱炭素の取り組みを強化するのは当然ともいえる。
だが、自らの利益追求を目的とする企業が脱炭素の目標を掲げ、これを実現しようとするのはなぜなのか。企業が脱炭素に努めても、その成果を享受するのは自社だけではないという「外部性」を考えればなおさらである。そこには金融の力と世論・政策が相乗的に働いていることを理解する必要がある。
まず、金融の世界には巨大な機関投資家が存在する点に注意しよう。世界中の資産をポートフォリオに取り込んだ機関投資家であれば、その投資家に「外部」はない。だから、十分大きな機関投資家には、気候変動をも考慮するインセンティブが生まれるはずである。
また気候変動には、現在世代が温室効果ガスを排出し、そのコストは将来世代が負担する構図が多い。年金基金にとって重要なのは短期の収益性ではなく、自らのポートフォリオの30年後、50年後の価値である。ならば、年金基金は将来の気候変動についても考える必要がある。
とはいえ、機関投資家が自主的に脱炭素を始めたわけではない。実際のきっかけは2006年に国連が責任投資原則(PRI)を定め、世界の機関投資家に署名を求めたことだった。潜在的なインセンティブを持つ機関投資家の多くが署名に応じ、ここから環境や社会問題、企業統治を重視するESG投資が広がったのである。
この記事は有料会員限定です
残り 774文字
