5月14日、政府は新型コロナウイルス感染抑制のための「緊急事態宣言」の対象に北海道、岡山県、広島県を追加した。政府の当初方針は「まん延防止等重点措置」の適用だったが、専門家組織である基本的対処方針分科会が「変異株の感染力は強い」「医療逼迫のおそれ」「国民への強いメッセージが必要」と主張して、政府もこれを受け入れた格好だ。
意見を聞くために専門家を集めているのだから、異論が出ることや、その結果、政府の当初方針が変わることもあるのは当然だ。ただ、新聞の論調の多くが「専門家の反乱」「政府を追認せず」「画期的」と持ち上げた。この風潮には要注意である。専門家を利用しての世論誘導も多く見られるからだ。
新型コロナウイルスの存在が知られるようになってまだ1年数カ月。実際にこのウイルスそのものを分析し、ワクチンや治療薬の開発に昼夜取り組む研究者でも、ウイルスの性格や振る舞いを解明しきれていないのが実情だ。ワクチンによる抗体の持続性や変異株への効果なども「論文が出つつある」という現在進行形なのである。
つまり、政府の分科会メンバーでも、知っていることは限られ、その多くが研究機関や欧米の当局からの伝聞である。実際に分科会の尾身茂会長は「変異株」について、「……とされています」「まだわかりませんが」など断言を避けているが、当然であろう。
ところが人は「よくわからない」という状態は耐えがたく、単純な説明や解を求めがちだ。新型コロナについても、断定的に話す「専門家」ほどメディア受けする。そこでは「欧米では」と論が展開されがちだが、実際には医療は人種や気候風土、生活習慣にも左右され、日本に当てはまるとは限らない。日本のコロナによる死者は欧米の数十分の一である。これまでメディアがPCR検査の徹底で感染を封じ込めたと称賛してきた台湾は今では感染が再び増加。同じく新型コロナ対策の優等生と称したニュージーランドは「鎖国」を解けない自縄自縛に陥っている。
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