膠着していた国際租税改革の議論が動き出しそうだ。焦点は、巨大IT企業など多国籍企業の租税回避への対応策だ。4月、イエレン米財務長官が対応策の1つである国際的な最低法人税率導入を主要20カ国・地域(G20)に提唱したことにより、6月のOECD(経済協力開発機構)会合、7月のG20財務相会合で国際合意にたどり着く可能性が出てきた。
改革の舞台は、2012年からOECDとG20の枠組みで始まったBEPS(税源侵食と利益移転)プロジェクトだ。参加国は約140カ国・地域に達し、影響力は絶大。すでに軽課税国などで63の有害税制が廃止され、税の透明化に向け、非居住者(オフショア)の金融口座情報を各国税務当局間で自動交換する仕組みも整えた。
残された課題は、多国籍企業による合法的な租税回避にどう対応するかだ。多国籍企業は特許権やソフトウェアのアルゴリズム、ブランドなどの無形資産を軽課税国に移転し多額の利益を移し替えることで課税を回避する傾向がある。さらにIT企業の場合はユーザーのいる国に支店や工場を置かないため、消費国で課税できないという問題もある。最近の調査によると、全米上位500社では法人税ゼロは91社、平均実効税率は8%だった(18年、法人税率は21%)。
BEPSプロジェクトではこれまで2つの対応策が提案されていた。1つは、利益率が極めて高いIT企業などについて一定の超過利益への課税権を消費国に配分すること(第1の柱)。もう1つは、国際最低法人税率を導入し、それに満たない軽課税国での利益に対しては居住国が課税(最低税率との差額)することだ(第2の柱)。
米トランプ前政権は第1の柱について自国IT企業を標的にするものだとしてセーフハーバー(企業の選択制)を提案して骨抜きを図り、その後、新型コロナウイルス禍もあって議論は暗礁に乗り上げた。これを転換させたのが、国際協調復帰を進めるバイデン政権だ。第1の柱ではセーフハーバー案を取り下げ、売り上げ規模と利益率で対象企業を決めるルールを提案する(世界で約100社)。そして冒頭のように、第2の柱でも正式に導入の提唱へと舵を切った。
この記事は会員限定です
残り 659文字
