[Profile]なかふじ・れい 日本経済新聞社 企業報道部記者。1987年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、米ポートランド州立大学留学。2010年愛媛新聞社入社。13年日本経済新聞社入社。食品、電機、自動車、通信業界やM&A、働き方などを担当。
『安いニッポン』というタイトルは、少し前ならキャッチーなものだったかもしれないが、今となってはうら寂しく感じられる。多くの国民が、世界の先進国と比べると自分たちは「下流」だ、ということに薄々気づいてしまっているからだ。
本書は、一昨年、日本経済新聞に掲載された「安いニッポン」シリーズをベースに、新たな取材から得た話などを盛り込み書籍化したものだ。連載時とくに反響が大きかったのは、「『年収1400万円は低所得』人材流出、高まるリスク」の記事だったという。
米住宅都市開発省がサンフランシスコで年収1400万円の4人家族を「低所得者」に分類した一方で、日本で最も平均所得の高い東京都港区でも平均年収は約1217万円。つまり日本の富裕層居住エリアとされる港区でも、平均所得はサンフランシスコの「低所得」並みなのである。
また、世界のディズニーランドの大人1日券の料金を見ると、東京ディズニーランド(TDL)の8200〜8700円に対して、米フロリダは1万4500円、カリフォルニア、仏パリ、上海でも1万円を超えている。TDLより敷地の狭い香港でも8500円で、世界6都市にあるディズニーランドの中でTDLは最も安い。
日本が「安く」なった背景には、長いデフレによって、企業が材料や人件費の負担増を価格に転嫁するメカニズムが破壊されてしまったことがある。製品の値上げができない→企業がもうからない→賃金が上がらない→消費が増えない→結果的に物価が上がらない、という悪循環が長年にわたって続いている。
加えて、「生き残るには価格競争」といった同質的な競争気質が続いてきた面もある。「オンリーワン」で勝負する欧米企業に対し品質・性能・ユニークさで競うことができず、安さで勝負してしまう。
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