東日本大震災から間もなく10年を迎える3月9日、政府は「復興の基本方針」を閣議決定した。そこには東京電力ホールディングスの福島第一原子力発電所事故に関して、「被災者に寄り添った適切な賠償が行われるよう、東電を指導する」「必要に応じて(賠償についての国の)指針等の見直しに関する検討を行う」と明記されている。
しかし、ここ数年間に相次いで出された裁判所の判決内容への東電の対応を見ると、被害者に真摯に向き合う姿勢が欠如していると感じざるをえない。
2020年3月、仙台高等裁判所は原発事故で故郷(ふるさと)を追われた住民による訴訟の判決で、従前の避難生活の継続による慰謝料とは別に、国が定めた指針に明記されていない「故郷喪失慰謝料」や「故郷変容慰謝料」の支払いを東電に命じた。
対して東電は、その後の最高裁判所への上告受理申立理由書において、「『故郷』はその概念自体が極めて不明確」であり、「故郷喪失を個人の法律上保護される利益とみること自体が疑問である」としてその存在を認めず、徹底して争う姿勢を示している。
東電は、原告らが居住していた地域の住民のうち97%が訴訟を提起していないとも指摘。そのうえで、国の指針に基づいて定めた自社の基準による賠償の支払いについて「大多数の者が過少であるとはみてはいないことの証左である」などとも述べている。
空文化する「3つの誓い」
こうした東電の姿勢は、福島市や郡山市など避難指示区域外からの避難者が中心になって提起した訴訟でも鮮明になっている。
今年1月、大阪高裁での控訴審で東電の代理人弁護士は次のように言い切っている。
「空間放射線量の状況等を踏まえると、(避難指示区域外に居住する)大多数の居住者において利益侵害は発生していない」
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